今の時代のリーダーに必要な5つの資質とは、自分で考える力を養う、行動に責任を持つ、物事を広く捉える、変化を生みだす、国という概念を超えることだと考える。
このコラムも6回目となり今回は最終回です。「リアル・リーダーとしてキャリアを積んでいく上で何をすべきか」というテーマで話します。
ここ数年で一気にものづくりジャパンの神話も崩れてきて、日本を代表する大企業の凋落が想像以上のスピードで加速してきています。数年前には考えられなかった大企業の多くが存続の危機さえ問われる時代となり、製造業の多くは3.11の震災以降国外に工場移転をせざるを得なくなってきました。日本国内における雇用維持の問題も大きく取りざたされてきています。世界における日本のプレゼンスがどんどん低くなってきています。
そういう時代に今必要とされていることは50代の人間が中心となり、速やかに世代交代を行い、30代、40代のまっとうなリーダーにバトンタッチをし日本をよき方向に推し進めていけるような橋渡しをするべきだと感じます。
韓国は1997年の金融危機以降大きく世代交代を行い、政治経済のリーダー層は一気に40代に若返りました。今後国がどうやって生き残るのかということを本気で考え、集中と選択を行い、会社を統廃合して国を挙げて一丸となり再建に取り組んだ結果、今の躍進につながっていると思います。
やはり、今後の20年30年先を本気で考えると、日本もここで大きく世代交代を行い、50代・60代のリーダーたちは次世代にバトンタッチをしていくことが必要だと感じます。さまざまな業界でその動きは出てきていますが、まだ旧体制が既得権を手放さずにずるずると日本の得意な「先延ばし」をしてきていますが、もう待ったなしの状況です。
10代、20代の若い世代の人たちも不遇な状況を嘆くだけではなく、今の政治経済の状況を自分事として捉え、未来を見据えて積極的に行動し、30代、40代と競っていくことが必要だと思います。
さて、そろそろ今回のテーマとなっている「キャリアを積んでいく上で何をすべきか?」を話します。今の時代のリーダーに必要な5つの資質とは、自分で考える力を養う、行動に責任を持つ、物事を広く捉える、変化を生みだす、国という概念を超えることだと考えます。
今のリーダーに求められることは、自分の意見を明確に「自分の言葉」で伝えることです。そのために、日々仕事をしている中で起こってくる出来事に対して、自分がどう思うのか? どう感じるのか? を常に問いかけ、感覚を研ぎ澄まし、そしてそれを伝える能力を磨いていくことが大事です。あたりまえだと思いこんでいることに対して、常に本当にそうなのか? そのように思い込まされてきただけではないのか? という疑問を持ち続けることです。
また、学校で習ってきた知識やメディアやインターネットを検索して知りえる情報だけで満足せず、古今東西の歴史や哲学や宗教などいわゆる「教養」と呼ばれるものへの造詣を深めるとともに、最新のテクノロジーや経済の動向など日々変化していく世の中にアンテナを張り巡らし、常に学び続ける姿勢が求められます。
そして、知識を詰め込むだけではなく、それを実際の現場で検証し、PDCAを繰り返すことによって得られる実際の成功と失敗が経験値となり、言葉にも深みが出てきます。特に失敗経験のない人はつつがなく仕事をこなしているひとであり、新しいことにチャレンジしていないともいえます。失敗を恐れず、ただし、なぜ失敗したのか? をきちんと分析し、今だったらどうするのか? ということを具体的に考えられる人が評価されています。そういう人が語る言葉には、やり抜いた人間にしか醸し出されない魂のこもった重みのある発言になっていきます。
同時にリーダーは自分の言動に責任を持つ必要も出てきます。現在ではソーシャルメディアなどで、感情に任せて相手の立場や状況を考えずに発することで人を傷つけたり、思いがけずに飛び火をして大炎上となることもあります。それぞれのメディアの活用の仕方を考え、言いっぱなしの無責任な文化にしないように自身の品格を問われる時代になってきました。政治は民意の反映、鏡だとも言われています。一人ひとりの意識が上がらない限り、国民全体のレベルも上がってきません。
また、言ったことを実行しているのかということも検証する必要があります。とはいえ、変に委縮することなく、失敗を重ねながらみんなが学んでいく時期でもあります。失敗を責めることなく、個人攻撃や弱者攻撃をするのではなく、一つひとつを学びに変えて、本当の意味での「衆知を集める」ツールとして活用していき、致命的な失敗をしないようにする知恵が求められる時代だと思います。
ただし、大事なことは「誰が言っていたから……」「みんなが言っていたから」ではなく、みんなの意見を聞きながらも最後に「決断して責任を取る」ことがリーダーの役割だということを理解しておく必要があります。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授