マニュアルは組織と社員行動を意識して作成されなくてはならないマニュアルから企業理念が見える(2/2 ページ)

» 2012年11月12日 08時00分 公開
[勝畑 良(ディー・オー・エム・フロンティア),ITmedia]
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形式的観点から見たマニュアルを構成する5つの要素

マニュアルは、企業内の文書構造そのものである。従って、技術的には、そのマニュアル一つで、そのマニュアルに必要とされる全ての組織的要請を盛り込むことができる。しかし、それは使用者にとって、不必要なものの羅列ということになりかねない。マニュアルは使われなければ意味がない。

そこでマニュアルは、原則的に1作業手順について1つの手順書をマニュアルの出発点とした。そして、2つ以上の作業手順書を作業遂行面から合体させる場合は、その趣旨を必ずマニュアルの目的欄に記述することを義務づけたのである。

マニュアルには記載されなくてはならない5つの項目がある。それは表紙、目的、用具、内容、注意事項である。この5つのどれを欠いてもマニュアルとはいわない。

表紙はこの文書が持つ全社的な位置付けを明確にする。目的はこのマニュアルの組織上の機能的役割を明示する。用具は該当作業を遂行するに当たっての道具、必要備品、装置、会場の広狭等について記述する。内容はこの文書の核をなすものである。即ち作業手順である。最後は注意事項である。

以上の5項目について 今回は3項目に関し記載する。

(1)表紙

どのようなマニュアルであっても、これは同じ形式で作成される。そのはじめは表紙がある。表紙にはまずタイトルが明示されていなくてはならない。次に文書番号が附番され、記載されていなくてはならない。これは重要である。

附番は8桁以上としたい。最初の1桁は、アルファベットとする。これはこの文書がどの部署に属し、管理されているかを示すものである。Aは総務部、Bは人事部というように決定していく。

次の4桁は作成年月である。最後の3桁はその文書の作成順位である。これには定型はない。それぞれの企業の管理しやすい方法で定めればよい。表紙の裏面に改正年月を詳細に記載する企業もある。改正の大きさによっても異なる。マニュアル作成者はこの点に配意しつつどう記述するかを判断すべきであろう。

次は秘密区分である。秘密区分には、極秘、部外秘、社外秘の三種がある。この区分は管理者が定め、表紙に印字しなくてはならない。この他まだいろいろ記載すべきものもあるが以上の諸項目は絶対不可欠である。

(2)目的

ここで記載すべきことは、このマニュアルが上位のマニュアルとどのような関連性を持っているかを使用者に明確に認識させることである。部の方針の説明を分かりやすく書き、それを具体化するために自分たちがこのマニュアルの手順に従って行動するという趣旨が使用者に理解されるように書かれていなくてはならない。

業務マニュアルは職務マニュアルの合成されたものである。従って、職務マニュアルは作業手順書を統括するのは、業務マニュアルとの一体性が保証されていなくてはならない。該当職務の意義を業務マニュアルの観点から説明することを忘れてはならない。また、2つ以上の作業手順を作業手順書に記述する場合も誤解のでないように説明しなくてはならない。

(3)使用用具

教育研修に必要とされる用具が、全て記載されなくてはならない。講師との連絡を綿密にして遺漏を起こさないように注意しなくてはならない。講師のスタイルは、千差万別である。パソコンを使って画面の説明で終始する講師もいれば、黒板一つで何も道具はいらないという講師もいる。部屋の照度、机の配列等、講師が気持ちよく講義できるように主催者は、可能な限りの配慮を示さなくてはならない。

即ち「その企業で現実に行われている作業行動のうち最も正確で、安定しており、かつ最もコストの低い作業手順を書く」のが、マニュアルを作るということであるのを忘れてはならない。

しっかりしたマニュアルを作れば、人が交代しても作業の水準は変わらない。これは必ず業績に良い結果をもたらすであろう。内容、注意事項の2項目は次回説明する。

著者プロフィール

勝畑 良(かつはた まこと)

株式会社ディー・オー・エム・フロンティア 代表取締役 

1936年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、1964年にキャタピラー三菱(株)に入社。勤労部、経営企画部、資金部を経て、1986年、オフィス・マネジメント事業部長としてドキュメンテーションの制作、業務マニュアルの作成、語学教材の発行などさまざまな新規事業に取り組み、1992年4月、業務マニュアルの制作会社である(株)ディー・オー・エム(現在:株式会社ディー・オー・エム・フロンティア)を設立し、代表取締役に就任。「いま、なぜマニュアル革命なのか?」(『企業診断連載』)で平成2年度日本規格標準化文献賞<最優秀賞>受賞など論文多数。


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