目標達成を主軸とする組織作りが、組織の前進する力を強くする気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(1/2 ページ)

目標を見失うことさえなければ、どんなに大きな困難も乗り越えられる。そして、それぞれの価値観を認めること。前線で働く人も、後方でバックアップする人も必要だ。

» 2014年06月11日 08時00分 公開
[聞き手:中土井僚(オーセンティックワークス)、文:牧田真富果,ITmedia]

 UBICは、米ナスダック、東証マザーズに上場している、日本で唯一の国際訴訟における独自技術を用いた情報解析事業を行う会社だ。競争法や知的財産関連の国際訴訟で顧客のアジア企業を支援し、創業11年目を迎える。情報解析分野で世界ナンバーワンになることを目指し、目標達成にこだわる組織のマネジメントを行っている。社長は自衛官出身だという守本正宏氏。その経験から生み出される独自の思想を紐解いた。

日本企業を守りたいという思いから始めた情報解析事業

中土井:創業11年目ということですが、これまでにどのような事業をしてきたのですか。

守本正宏氏

守本:日本企業をはじめとするアジア企業の国際訴訟支援ビジネスをやってきました。訴訟の現場において、証拠を解析し、法的問題を解決する事業をしています。

 パソコンの普及により、訴訟における証拠の多くは電子情報となりました。情報量が多いため、人の手で必要な情報を選別するには膨大な時間がかかってしまいます。そこで、われわれが提供するのが人工知能を用いた情報解析サービスです。この人工知能は、人間の行動を予測する行動情報科学に基づき独自に開発しました。われわれは、アメリカの訴訟社会で唯一、日本の会社として独自技術で情報解析を行っています。訴訟社会といわれるアメリカで戦うため、ナスダックにも上場しました。日本企業のこのサイズでナスダックに上場できたのはわれわれだけだと思います。

中土井:今の事業を始めるまではどのような仕事をしていたのですか。

守本:もともとは自衛官でした。94年に退官し、その後、外資系の半導体メーカーに入社しました。8年間勤めた後、今の会社を起業して現在に至ります。

 現在展開しているような情報解析事業の存在を知ったのは会社員のときです。防衛大学時代の先輩で、商社のアメリカ法人社長をしていた人から、訴訟支援事業の話を聞いたのがきっかけでした。事業内容に興味を持ち、いろいろと調べてみると、日本には国際訴訟の支援を情報解析の側面からサポートする会社がないということが分かりました。多くの日本企業がアメリカへ進出しているにも関わらず、日本企業を訴訟の面で支援する日本の企業がなかったのです。

 訴訟というと、弁護士を雇って戦うというイメージがあるかもしれませんが、実際には費用の約7割はデータ解析に充てられます。アメリカの会社に解析を依頼することになりますから、会社が持っている非常に重要な情報を海外の会社に引き渡すことになってしまうのです。その現状を変えたい、日本の企業を守りたいという思いで会社を始めました。

 起業したいという思いが先にあったわけではなく、この事業をやらなければならないという使命感から、結果的に会社を作るに至りました。前職を退職した頃は、私に社長業ができるとは全く思っていませんでした。

中土井:今の会社の事業と自衛隊時代の経験にはどのようなつながりがあるのですか。

守本:軍隊も情報解析事業もダメージコントロールをするという点では似ています。

 大きな会社であれば、訴訟は避けては通れません。特にアメリカでは、よい企業になればなるほど訴訟が発生してしまいます。会社がだめにならない限り、訴訟を避ける方法はありません。訴訟を起こされたとしても、ダメージをいかに小さくするかが重要なのです。

 軍隊においても、根底にある考え方はダメージコントロールです。戦争などの非常事態が発生した場合、ダメージを受けたとしても、最低限の戦闘能力を保持しながら生き残ることが国家の存続につながるのです。

事業をビジネスではなく、問題解決の手段と捉える

中土井:他の企業の追随を許さず、飛躍的な成長を遂げた理由はどこにあると思いますか

守本:ビジネスという意識でいるのではなく、問題解決を優先させてきたからだと思います。正確さ、スピード、低コストを追求した結果、今のやり方にたどり着きました。ビッグデータの捉え方をビジネスとして捉えると、IT技術の延長線上の技術になってしまいます。そうではなく、われわれは人の行動をどう解析しようかというところからスタートしています。独自のアルゴリズムを開発し、人工知能を作り上げたので、他社がまねをすることはできません。

 われわれの会社のCTO(最高技術責任者)は哲学、心理学、犯罪学などを研究し、システム構築に関わってきた人物です。他のキーメンバーの中には、スタンフォードで研究をしていた素粒子物理学者や計算言語学博士もいます。ITの延長線上の技術ではなく、人の行動の解析だと捉えているので、このようなメンバーになったのです。

日本人だからこそ、国際訴訟における情報解析事業で1番になれる

中土井:「戦う」という言葉を使っていますが、守本さんにとって戦いに勝つことはどのような意味を持っているのでしょうか。

守本:われわれが世界で1番になることです。それが社会貢献だと思っています。われわれがこの業界で1番になることで、訴訟社会における常識を変えられるはずです。情報解析事業は、実際に関わってみると、サービス業でありハイテク産業だと分かります。日本人が得意とする分野です。われわれは、訴訟業界のトヨタになりたいんです。日本は自動車業界において、発展途上にありましたが、その日本企業である、トヨタが自動車大国アメリカで、今や世界1になったように、訴訟において遅れをとっている日本から出てきたわれわれが1番になれると思っています。

 会社はまだ小さいですが、グローバル企業です。世の中の訴訟における公正、平等を守ることを理念に掲げています。この技術、経験すべてを使って不公平をなくしていくことを目指しています。

中土井:日本に対する誇り、思い入れはどこから生まれているのだと思いますか。

守本:自衛隊時代、前職の外資系半導体メーカー時代を通して、海外に行く機会や外国の人と会う機会が多くありました。海外の文化に触れることで、日本人の誠実で真面目な気質のすばらしさに気付く機会が多かったと思います。技術力も素晴らしく、日本人はとてもクリエイティブで、「日本の誇りを守りたい」という思いはずっと持ち続けています。

 仕事で海外の人と接するときも、外国のやり方に合わせるのではなくて、日本人としての考え方で話すようにしてきました。そうすると、ちゃんと理解してくれて、リスペクトしてくれるようになりました。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆