目標達成を主軸とする組織作りが、組織の前進する力を強くする気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(2/2 ページ)

» 2014年06月11日 08時00分 公開
[聞き手:中土井僚(オーセンティックワークス)、文:牧田真富果,ITmedia]
前のページへ 1|2       

会社のミッションが達成されることによって、個人の目標も達成される状態であること

守本氏(左)と聞き手の中土井氏(右)

中土井:どのような組織作りを目指していますか。

守本:ミッションを達成するために、効率的に動くことができる組織を目指しています。的確に動けるよう、組織そのものが身体を構成しているようなイメージです。直面している問題によっても、人の配置は柔軟に変わります。このようなマネジメントの考え方は、自衛隊時代の組織論や部隊の編成などが影響しています。

 モチベーションの面においては、会社の目的が個人の目的と合致することを重要視しています。継続するために大事なのは、会社のミッションが達成されることによって、個人の目標も達成されることです。

 訴訟支援ビジネスは戦場と同じです。戦場は危険で、あらゆる問題が発生する可能性があります。あらゆる問題を解決して、ミッションを達成し、しかも生きて帰ってくる強い人との組織作りが重要です。

目標を見失うことさえなければ、困難は乗り越えられる

中土井:会社のメンバーは何に引かれて集まったのだと考えていますか。

守本:やはり、高い目標を掲げているところだと思います。やっていることの意味を分かっている人は楽しんでいますし、ついてきてくれています。目標を見失うことさえなければ、どんなに大きな困難があったとしても、取り除くことができます。目標を見失ってしまうと、取り除くべき障害を見極めることさえできなくなってしまいます。

 経営者としての責任は、機会を与えることだと考えています。訴訟社会と言われているアメリカで、海外の上場会社などを相手に対等に戦い、勝利を収めるためには、今よりも組織を拡大させる必要があります。社員が頑張った分だけ組織は大きくなるでしょう。目標達成に向けて進み続けるならば、自然と部下も増えていくはずです。会社の中にそれぞれのポジションができて、必要とされる人間になれます。社内で競争するのではなく、外に向かって結果を出してくれと言っています。

 目標に向かうといっても、全員が指揮官であるべきだということではありません。全員に強い意志と体力を求めているわけではなく、それぞれの価値観を認めています。多様性がある方がうまくいきます。前線で働く人がいれば、後ろでバックアップする人も必要です。

最終的に決断を左右するのは人生観

中土井:会社を作ってから現在までで、自身について大きく変わった点はありますか。

守本:自分の考え方や生き方、経験を振り返るようになりました。何か決断をしなければならないとき、その判断には人生観が関係してくると実感しています。このことは自衛官のときから言われてきました。戦場における究極の決断においても、最後には、それまでにどんな生き方をしてきたのかが影響するのだと教えられました。明確な答えがあるのではないので、人生観が決断を左右するのです。今まさに、日々決断を迫られているので、以前よりも自分の人生観を信じるようになりました。

中土井:次の人に会社を譲ってもいいと思うようになるのは、どのような状態になったときだと考えていますか。

守本:まだ考えたことがありません。おそらく、自然に次へ渡せるときが来るのだと思います。経営における私の価値観を若い人へ伝えていこうとはしていますが、意図的に身を引く状況を作ることはしない気がします。

 経営は意図的に進むだけではありません。思いがけない偶然によって、素晴らしくうまくいくことがあります。創業してからどんなことをして、今につながっているのかよく聞かれますが、正直、今になって説明したところで、後付けにしかなりません。私なりに考え抜いて今までやってきましたが、最後の1ピースは運が決めるような気がします。

中土井:話を伺っていて、ミッションを達成するための組織という観点で戦いやすい組織作りをしていることは守本さんの自衛官としての経験と深い関わりがあると感じました。日本企業として世界ナンバーワンを目指し、国際訴訟の公平性を守りたいという思いに人々が引き寄せられ、会社が成長してきました。

対談を終えて

 「組織」という捉え方が、その経営者の人生観、哲学、人生経験というものによって、大きく異なってくるということを改めて痛感する機会となりました。特に、ビジネスという共通のフィールドであるにも関わらず、どんなメタファーで状況を捉えるかによって、「組織」という存在はこうも違うものなのかと驚きすらも感じます。

 組織を進化する生命体としてのメタファーとして捉える人もいれば、人間成長の学校というメタファーとして捉える人もいる。また、自分の組織を自分の作品を描くキャンパスとして捉える人もいます。守本社長は自衛隊という過去の経験から、軍隊というメタファーから組織を捉えているのがひしひしと伝わってきました。

 組織観は多様であるにも関わらず、経営理念に拠って立つところから組織を考える点においては、理念経営をしている他の創業社長と一致しているのがとても興味深く思うのとともに、そこに人と組織の本質を感じずにはいられません。

プロフィール

中土井 僚

オーセンティックワークス株式会社 代表取締役。

社団法人プレゼンシングインスティテュートコミュニティジャパン理事。書籍「U理論」の翻訳者であり、日本での第一人者でもある。「関係性から未来は生まれる」をテーマに、関係性危機を機会として集団内省を促し、組織の進化と事業転換を支援する事業を行っている。アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア株式会社)他2社を通じてビジネスプロセスリエンジニアリング、組織変革、人材開発領域におけるコンサルティング事業に携わり2005年に独立。約10年に渡り3000時間以上のパーソナル・ライフ・コーチ、ワークショップリーダーとしての活動を行うとともに、一部上場企業を中心にU理論をベースにしたエグゼクティブ・コーチング、組織変革実績を持つ。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆