権威を後ろ盾とした思考停止は、一刻も早く改めたほうがいいビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

経済政策とはいったい誰のために存在するのか考えてみてほしい。すべての人々や企業に平等に恩恵をもたらすユートピア的な経済政策などは存在しないことは分かっているが、このままでいいのだろうか。

» 2015年02月26日 08時00分 公開
[中原圭介,ITmedia]
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これから日本で起こること

 経済政策とはいったい誰のために存在するのでしょうか?

 国民の所得階層で言えば、富裕層のためでしょうか?中間層のためでしょうか? 貧困層のためでしょうか? 企業の規模で言えば、大企業のためでしょうか? 中小企業のためでしょうか? 零細企業のためでしょうか?

 すべての人々や企業に平等に恩恵をもたらすユートピア的な経済政策などは存在しないという現実を、私も承知しているつもりですが、それにしてもアベノミクスが柱とする金融緩和に依存するインフレ政策は、富裕層や大企業に恩恵が集中せざるをえない政策のため、普通に暮らす国民の立場から見ると、あまりにも筋が悪すぎました。経済の本質や歴史について先入観を持たずにしっかりと検証していれば、このような愚かな経済政策を行うはずがなかったのです。

 アベノミクスが始まって以降、雑誌の対談記事などで「リフレ派」と呼ばれる識者の方々と激論を交わすこともあったのですが、アメリカのインフレ政策がいかに庶民生活を疲弊させてきたかということを指摘しても、まともに論理的な反論をしてくる識者はこれまで誰一人としていませんでした。

 反論できないばかりか、「僕が教わったポール・クルーグマンがインフレ目標は正しいと言っていた」と議論を終わらせようとする始末なのです。だから、「ポール・クルーグマンの言っていることは現実に起こっていることと照らし合わせると、本当に正しいことと言えるのでしょうか?」と聞き返すと、「とにかく、ポール・クルーグマンがそう言っている」としか答えが返ってこないわけです。

 要するに、リフレ派と言われる人々は経済学の権威を後ろ盾にして、思考停止の状態に陥ってしまっているのでしょう。大学時代に歴史学を専攻した知見から申し上げると、これと同じような現象は中世から近世にかけての西ヨーロッパの歴史にも見ることができます。

 ルネサンスが起こる14世紀以前の西ヨーロッパは、経済的な繁栄においても学問のレベルにおいても、アラビア半島や中国に大きく劣っていました。それは、キリスト教における神の権威があまりに強かったために、自然科学や技術の発達が著しく妨げられてきたからです。

 世界史をひととおり学んだだけでは教えられないことなのですが、西ヨーロッパがあらゆる面においてアラビア半島や中国を追い抜き文明的に圧倒的な差を付けたのは、18世紀から19世紀にかけての時代になってからのことです。この時代の西ヨーロッパは、産業革命の影響で世界が急激に近代化した時代、フランス革命の影響で自由主義が広がった時代でありますが、その時代の原動力となったのは自然科学を裏付けとした技術力の向上だったのです。

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