いい人だから、器が大きいとは限らない。まじめすぎると、器は大きくならない。では器を広げるにはどうすればいいのか。
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器の大きさは、日常生活の中で差がつきます。
たとえば、メールの仕方にも、器が出ます。メールが出始めた初期のころは「自分のメールで必ず終わる」というマナーがありました。相手からもらおうが、自分から送ろうが、最後のメールは自分でしめくくるのが、マナーでした。マナーの本にもそう書いてあって、みんなが実践していました。
でも、これをやると面倒なことが起こります。終わらなくなるのです。「自分が最後」と思って送ったのに、相手も自分が最後になりたいので、またそれに返してきます。これが深夜2時3時のやりとりになるのです。「それでは、おやすみなさい」で切ったつもりなのに、「今日お話しできて楽しかったです」と返ってきます。それにまた何か返さなければならないのです。
相手に花を持たせるために、自分は不作法の側にまわれるのが器の大きさです。
マナーと器は一致しません。
マナーは、器によって変わるのです。
器の大きな人のマナーは、自分のメールで終わることです。
器としては、相手に花を持たせて、自分は返事をしない側で終わります。
そうすれば、相手は早く眠れます。
自分と相手を第三者の目から見ることができるのが、器が大きいということです。自分のメールを最後にしたい人は、自分の側からしか物事を見ていないのです。
いい人だから、器が大きいとは限りません。
まじめすぎると、器は大きくなりません。
例えば、間違いメールが来た時に、まじめな人は「間違えてますよ」というメールを送ります。「送りたかった人にメールが届かなかったら困るだろう」と思っているのです。
器の大きい人は、ここで知らんぷりできます。間違いメールを送った人は、へこんでいます。本人が気づいて、「メールを誤送してしまいました」というメールまで来るぐらいです。
その時に、器の大きい人は「届いてなかったみたいですよ」と言えるのです。器の小さな人は、いいかげんな人ではありません。まじめで一生懸命だから、よかれと思って「間違えてますよ」と送るのです。そうすることで、逆にその人とつき合いにくくなります。
これが仕事のメールなら、大変なことになります。恋人へのラブラブメールを仕事先の人に送ったら、もっと気まずいです。気まずい空気にならないようにするのが、器の大きさです。
ある有名人とパネルディカッションでご一緒したことがあります。本番前に一緒にトイレに行くと、その人は観客の人に「あっ、〇〇さん、いつも見ていますよ」と言われました。それが間違った名前だったのです。その間違った名前の人も、同じパネルディスカッションに来ています。
この時に、「僕、○○ですけど」と訂正するか、「いつもどうもありがとうございます」と言うかで器の大きさが分かれます。ファンだから声をかけたのに、別の人の名前を言ってしまったとわかると、声をかけた人は気まずくなります。
「さすがにこの人は器が大きいな」と思ったのは、彼はニコニコ笑いながら握手したのです。私も「こういう場合は訂正してはいけないんだな」と学びました。
似たような状況の時に、横にいた人が「〇〇さんではなく、××さんですよ」と訂正しました。せっかくおとぼけをしているのです。その器の大きさを理解できなかったら台なしです。ここで気まずい思いをさせるのは、握手している両者です。
「この人は間違っているのに握手していたのか」ということになるのです。
みんなが気を使ってやっていることに気づけることが、器の大きさなのです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授