コマツにおけるデータマネジメントの要はグローバル管理と一気通貫の流れ(1/2 ページ)

超大型から最小クラスまでの建設機械の製造・販売を事業とするコマツ。部品点数が多く、バリエーションも多い建設機械を効率的に製造・販売するために、いかにデータ管理を実践しているのか。JDMCのデータマネジメント大賞も受賞したコマツのデータ管理を学ぶ。

» 2015年09月30日 08時00分 公開
[山下竜大ITmedia]

ICTの活用で他社との差別化を

小松製作所 情報戦略本部 ソリューション部 デジタル・エンジニアリング Gr長 横堀達也氏

 コマツでは、積極的にICTを活用し他社との差別化を図っている。GPSを搭載し位置情報を把握して、インプットされた設計データのとおりにセンチメートルの精度で整地を無人で行うブルドーザー。これはコマツが開発した遠隔で機械の稼働管理を行うシステム「KOMTRAX(コムトラックス)」に続いて開発された新しいビジネスモデル分野を開拓する戦略商品である。

 これでさまざまな情報を管理することにより稼働率の向上や、メンテナンスコストの削減など、革新的なサービスにつながっている。同様にICTを業務に組み込むことで、業務改革を実践。2015年3月には、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)が模範となるデータマネジメントを実践する企業を表彰する「第2回 データマネジメント賞」の大賞を受賞している。

 1921年に設立されたコマツは、事業の90%が建設機械の製造販売という建設機械メーカー。販売先は国内が20%、海外が80%である。代表的な製品としては、超大型ダンプトラック、超大型油圧ショベルカー、超大型ブルドーザー、超大型ホイールローダーの大きく4機種がある。これらの製品の特長として、部品点数が多いことが挙げられる。またバリエーションが多いことも特長のひとつである。

 超大型製品と最小クラスの部品を比較すると、ダンプトラックで約9倍、油圧ショベルカーでは5250倍であり、小さな製品から大きな製品までを、設計、製造、販売している。生産拠点は、グローバルに展開。開発センターの機能を兼ね備えている生産拠点もある。事業方針としては、社会需要のある地域生産をすること。開発と生産を一体化したマザー工場が、チャイルド工場を指導することも方針のひとつである。

部品表データをグローバル管理

 2003年、経営トップから情報システム部門に、2つのグローバル経営課題が降りてきた。1つ目はグローバルで共同開発ができるインフラを構築すること。例えば中型ブルドーザーを米国センターで開発し、主要なコンポーネントは日本で設計をして開発することができるインフラを構築することが求められた。

 そこで、統合設計部品システムを構築。米国の開発センターと日本の開発センターが、それぞれ担当の部品表を登録し、この部品表を使って生産をするブラジル工場のERPシステムと部品データを連係することで無事に量産体制を確立した。この仕組みは、2006年に構築されている。

 小松製作所 情報戦略本部 ソリューション部 デジタル・エンジニアリング Gr長の横堀達也氏は、「統合設計部品システムは、米国だけでなく、欧州でも有効活用できるので、欧州の拠点にも導入し、米国と欧州で共同開発を行い、各国の工場で生産する仕組みを確立しました」と当時を振り返る。

 2つ目の経営課題は、世界で同時に量産できる体制の確立である。ただし厳密な同時量産は困難であり、まずは日本工場をマザー工場として量産体制を確立、ここでのノウハウを海外チャイルド工場に導入し量産体制を確立するまでのリードタイムを最小にすることに取り組んだ。

 「当時1年かかっていた米国市場への展開のリードタイムを、グローバル統合システムの構築により半年に短縮しました。しかしアジア市場では、まだ1年以上というリードタイムがかかっていました。日本で作った新型車が中古でアジア市場に出回っても、アジア市場では旧型を製造しているという状況でした」(横堀氏)

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