コマツにおけるデータマネジメントの要はグローバル管理と一気通貫の流れ(2/2 ページ)

» 2015年09月30日 08時00分 公開
[山下竜大ITmedia]
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 アジア市場における量産体制確立までのリードタイム短縮をいかに実現したのか。改革前は、日本の設計者が日本の部品システムに部品表をインプットし、日本のERPシステムに転送していた。一方、海外現地法人向けに、部品表や図面、設計変更情報などをオフラインで転送。海外現地法人は、個々のERPシステムに手作業でインポートしていた。

 問題は設計変更情報を自動でインポートできないこと。そこで2009年に統合設計部品システムを構築。各現地法人のERPシステム向けにインタフェースを開発し、設計変更情報も含め、日本の部品表情報が、海外拠点のERPシステムに自動で連携される仕組みを構築した。これにより設計から生産まで、部品票表情報がスムーズに流れるようになった。

製品データの一気通貫の流れを実現

 コマツでは、市場の変化にあわせ、経営目標も変化している。以前は顧客により良い商品を提供することが目標だったが、現在では顧客が必要とするサービス、ソリューションを提供することが目標となっている。また従来は車体販売が中心だったが、現在はライフサイクル全体を通して顧客をサポートすることが重要になっている。

 横堀氏は、「現在では、補給部品の販売やメンテナンスサービスにより、収益率を向上できる仕組みの実現が求められています」と語る。またIT部門の重点課題の変化もある。2010年までは販売・生産システムが中心だったが、最近では顧客よりのフロントエンドの仕組みが重要になっている。

 そこで取り組んでいるのが、サービスBOMや3次元CADを中心とした次世代パーツカタログの実現である。パーツカタログは、製品の分解図と部品リストで構成されており、サービス担当者が消耗品や故障部品を交換するときに利用する。このパーツカタログの刷新プロジェクトが、2014年末よりスタートしている。

 「データマネジメントの観点から2つの情報の流れがあります」と横堀氏。まず情報の流れの中で部品表データは、機種ベース、モデルベースでのパーツカタログとして管理されてはいるが、車1台ごとのパーツカタログとして管理されていなかった。そのため特定製品の部品表データを確認したいというニーズは多かった。

 またイラスト情報は、設計者が3次元CADデータにモデルを登録し、ビューワーデータに変換して編集。編集結果を2次元CADに変換、編集してイラスト情報が完成する。変換が2回あると情報の流れが2回分断されるほか、元データが変更されるたびに変換しなければならない。データマネジメントとしては問題であり、データ管理の工夫を考えている。

 横堀氏は、「データマネジメントの実現においては、いかに製品データをグローバルで管理し、製品データの登録情報や変更情報を、いかに一気通貫で良い流れにするかという動的な観点で考えることが重要です。良いデータ管理と流れができれば、必ず大きな改善効果につながります」と意気込みを語った。

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