社内外のデータ資産を活用して、イノベーションを起こす企業がある一方、データを武器にしきれていない企業もある。企業がデータ活用を推進し、確実に成果を得るための3つの要諦とは。
「データこそが“最強”の経営資源――データマネジメント成功の勘所」をテーマに開催された「第29回 ITmedia エグゼクティブフォーラム」。基調講演には、アクセンチュア デジタル コンサルティング本部 アクセンチュアアナリティクス統括 マネジング・ディレクターの工藤卓哉氏が登場し、「データ活用がビジネス成果につながらない3つの理由」について講演した。
アクセンチュアアナリティクスは、立ち上げから1年6カ月で100名以上のアナリストや処理基盤構築メンバーが所属する成長著しい組織である。現在、専門コンサルタントが、金融、通信・メディア・ハイテク、製造・流通、素材・エネルギー、公共・医療の各業界に特化したグローバルな組織でデータ解析に取り組んでいる。
また産学連携にも注力。「論文を書いたり、特許の申請をしたりするのは、アクセンチュアの中でもめずらしい部門。例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)とは5年間に及ぶ共同研究のスキームを持っている。共同開発したアルゴリズムはMIT側が持つことになるが、企業にとっては無償でMITやアクセンチュアの知見を活用できるというメリットがある」(工藤氏)
アクセンチュアアナリティクスの優位性は、アクセンチュアが本来得意としている専門領域のコンサルティング能力とシステム構築能力、さらに複雑なアナリティクスソリューションの構築能力の「バランス」が優れていること。企業の経営層とも深いつながりをもっており、顧客の評価はもちろん、第三者機関からも高く評価されている。
取り組みのひとつにDeNAライフサイエンスが2014年8月に提供を開始した、自宅でできる遺伝子検査「MYCODE(マイコード)」がある。MYCODEは単にゲノム解析を行うだけではなく、遺伝的な病気の発症リスクを分析し、ウェブで生活改善のアドバイスや管理栄養士によるヘルスサポートなどを提供する。このゲノム解析やリスク分析を支援している。
また佐賀県では、観光や医療の分野でデータ解析を導入。課題の中身を定量的に可視化して改善効果の大きいアクションが分かるよう優先順位付けを行い、限られたリソースを有効に活用できるようになった。
デジタルビジネスの急激な拡大は、既存市場や大企業のビジネスを脅かすほどに成長するとともに、新たなテクノロジー誕生のトリガーともなっている。ある調査では、Eコマースやスマートシティ関連サービス、モノのインターネット、モバイルデバイス、M2Mなどの普及拡大により、全世界のデータ量は2020年に40ゼタバイトになると予測されている。
しかし、一方で、「デジタル活用がうまくいかない」という声もよく耳にする。その理由として、「そもそもの入口が間違っている」と工藤氏は指摘する。「例えばデータ解析の場合、代表的なアプローチとして一般化線形モデルと機械学習というものがある。どちらが優れているという話ではなく、これら2つの違いや適性を理解し、目的に沿って使い分けることが必要」と語る。
「そのために重要なのは、そもそもの目的や背景をきちんと理解すること。目的や背景の理解にぶれがあると、最適なアプローチやスコープの設定ができない」(工藤氏)。
例えばB2Bの領域では、一般化線形モデルを利用し、ロジカルシンキングでビジネスプランを描き、仮説立案に基づいて、PCサーバを前提に実行に移すケースが多い。一方、B2Cでは、機械学習を利用し、デザインシンキングでブレーンストーミングを行い、100%の構成を求めずに探査的アプローチにより、モバイルを前提に実行するアプローチを展開することが多いだろう。
最適なアプローチやスコープを理解した上で、いざ「データ活用を進めよう」とスタートしたもののうまくいかない場合もある。工藤氏いわく、「創作性・問題認識の壁」「材料や道具の壁」「調理方法理解の壁」という、大きく3つの壁があるためだ。データ解析プロジェクトを開始するときに、「本当に結果が出るのか?」と上司に聞かれ、躊躇することがあるのではないだろうか。これが創作性・問題認識の壁である。
創作性・問題認識の壁を打ち破るには、とにかく試行回数を上げて、トライ&エラーを繰り返すことで最適な仮説を導き出す、あるいは仮説を高度化できる体制を確立することが重要になる。工藤氏は、「トライ&エラーの繰り返しに理解のある上司がいなければ、このデータ解析プロジェクトは厳しいものになる」と話す。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授