2016年、「異文化理解力」で違いの分かる日本人になる――他者理解は自己理解からビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

「あ・うんの呼吸」は通じない。自分たちの意思決定の背景にある文脈を、多様なステークホルダーに対し謙虚かつ根気よく明示していく必要がある。

» 2016年01月21日 08時00分 公開
[田岡恵ITmedia]
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異文化理解力

 「異文化理解力」は昨年の8月22日の発売でしたが、一時アマゾンでも売れ切れるほどの人気で、秋口には早々に増刷が決まりました。この反響の大きさは、日本のビジネスパーソンが外国人と仕事をする頻度がかなり増加していること、そしてそれに伴う文化面でのあつれきや課題意識が顕在化してきていることの証左かもしれません。

 この本はビジネスのシチュエーションにおける異文化間の問題に議論をフォーカスしていますが、特筆すべき点は、代表的な国の文化の違いを「カルチャー・マップ」という形で分かりやすく「可視化」していることにあります。このマップ上でのお互いの距離から、異文化間のビジネス上のスタイルの違いを相対的に理解できるようになる、という仕組みです。加えて、諸所にちりばめられたエピソードはユーモアに富み、クスクス笑いながら読み進めるうちに、具体的な事例を通じて自然と理解が深まる仕立てとなっているところも、大きな魅力です。

 この本では、各国のビジネス文化の物差しとして、以下の8つの切り口を紹介しています。いずれもビジネスの現場で日常的に観察される行動・現象を基としているため、ビジネスマンが求める実践性に富んでいます。

1.コミュニケーション:ローコンテクスト 対 ハイコンテクスト

2.評価(ネガティブ・フィードバック):直接的 対 間接的

3.説得:原理優先 対 応用優先

4.リード:平等主義 対 階層主義

5.決断:合意志向 対 トップダウン式

6.信頼:タスクベース 対 関係ベース

7.見解の相違(感情表現):対立型 対 対立回避型

8.スケジューリング:直線的な時間 対 柔軟な時間


 この8つの物差しに沿って各国の文化の特徴がマッピングされたものを見れば、その文化の全体感が把握できる仕組みになっていますが、外国人と仕事をした経験のある方の多くが、私同様、自身の経験と照らし合わせて、「なるほど、そういうことだったのか!」と積年の謎が解け、膝を打つ気持ちになるのではないかと思います。

 「カルチャー・マップ」は、自分が気になる他の国の文化を理解する上で、非常にパワフルな分析ツールとなることはもちろんのこと、私たちが自国の文化を理解する上でも、極めて大きな示唆を与えてくれます。まず、8つの物差しのいずれにおいても、日本文化が最も端のエリアに位置付けられていることに、多くの方は驚くのではないでしょうか。「カルチャー・マップ」を俯瞰すると、日本文化というものが、世界の中でも、かなりの「異端」に位置するということに否が応でも気づかされます。

 具体的には日本というのは、サンプル国の中で最もハイコンテクストな国。明言を避け、言外に含んでコミュニケーションする傾向が最も強い。これがいわゆる「空気を読む」ことを期待されるゆえんです。そして、ネガティブなフィードバックを本人には決してダイレクトには伝えない。組織内のヒエラルキーが明確で、上下関係を特に重んじる文化。しかし、決断はリーダーがトップダウンでするのではなく、みなの合意で達することを良しとする。信頼を築く上では個人的な人間関係を重視し、表面上の対立は徹底的に避け、感情はほとんど表に出さず、時間管理にはとても厳しい。以上が日本文化の特徴のサマリーとなりますが、例えばこれらをひとりの日本人ビジネスパーソンに体現したとするとどうなるでしょうか。

 あえて外国人に誤解されがちな点に絞ると、はっきりものを言わないので「秘密主義な人物」であると思われがちなことが挙げられます。さらには、はっきりものを言わないのは、意思の問題ではなく、そもそも説明するスキルが無いのではないか、と能力の問題に取られてしまう場合もあります。しかも、率先して決断するリーダーシップにも欠け、親しい人を身びいきし、知らない人には冷たく接する。スケジュールに関しては杓子定規で融通が利かず、付き合いにくいにも程がある!

 ちょっと極端なまとめ方をしましたが、このような日本人ビジネスパーソン像は、日本人を相手に仕事をする外国人の間では、よくあるステレオタイプとして定着してしまっているというのが残念な現実です。一方、このような文化の違いに起因する印象が、その人物固有の人格、パーソナリティーの問題として誤認されがちな点にも注意が必要です。

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