人脈づくりに近道なし人脈を科学する――つながる人、引き上げる人、できる人の法則(2/2 ページ)

» 2016年12月26日 07時26分 公開
[高田朝子ITmedia]
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目力と情報収集

 まず視線です。視線には相手の意図の認識や、自分の意志の表現、会話の交替の牽制などの効果(Kendon1967)や感性情報の発露(Baron-Kohen,1995)など多くの機能があります。ビジネスの現場において常に凝視している必要はありませんが、相手の目を見て話すというのはコミュニケーションの基本です。ところが、これができてない人がわりといるのです。

 有名な経営者と会った時に「すごい目力に圧倒された」と感想を漏らしているのをよく聞きます。ITの発達で電子コミュニケーションが多くなり、視線の重要性が改めて認識されたからでしょうか。「目力」という日本語は私の知る限り最近使われるようになった言葉です。

 目力があることは、多くの場合好意的に受け止められます。視線を合わす。そして相手を観察する。視覚情報で相手の情報を集めることは、言語化するための準備にもつながります。視線を合わすことを恐れずに、相手と目を合わすことで、多くの情報をあなたは得るでしょうし、相手もあなたの情報を得ることになります。

声のトーンとピッチ

 言語に直接つながる耳で聞く情報です。どの音の高さで話すのか、ゆっくり話すのか、マシンガントークにするのか。これはあなた次第です。

 昔の話ですが、私が大学を出て外資系の金融機関に勤めていた時に米国人の上司に言われたことがあります。高い声でお客さんと会話するな、と。今でも女性が不自然に高い声で話す場面に多く出くわします。昔はぶりっ子声と呼ばれていましたが、今は何と表現するのでしょうか。最近は高い声に加えて舌ったらずの鼻に抜ける不思議な発音まで加わりますから訳が分かりません。

 もとい、その上司は「高いピーピー言う声で話すのは、プロフェッショナルな仕事をしていない女性だけ。信頼を得たかったら低い声で話しなさい。私たちが扱っているのは金融商品なのだから」と何度もアドバイスしてくれました。

 確かに米国のニュース番組にアンカーで出演する女性は皆揃ってアルトの音域で話します。レポーターレベルの女性よりも落ち着いた印象を与えます。低い声を意識することによって、高い声できゃんきゃん話すよりも、その人の発するメッセージに対して信頼を持たせるのだろうと思います。高い声がいけないといっているのではありません。高い声ならば、ゆっくりきちんと話す。それで印象は格段に変わります。

 そして間の取り方、相手に先に話させる気配りなども意識すればできることです。雄弁が必ずしも良いとは限りません。詰め込まず話す、間の取り方によって100の言葉よりも心に響くことが多くあります。

 声のトーンや間や話すピッチといったものは自分でコントロールできるものです。自分で自分でのコミュニケーションのあり方をプロデュースし、相手に的確に情報を与え信頼を得るということも人脈の構築には必要な一歩なのだと思います。

終わりに

 最後に皆様に伝えたいことがあります。人脈は人生を豊かにするために重要なものです。そして、こればかりは会うことなしには始まりません。実際に会って、さまざまな活動を一緒にする。その中では合わない人もいるでしょうし、無二の親友となる人もいるでしょう。

 会うことをいとわないで下さい。ウェブ上の出会いも否定はしません。しかし、視覚情報や感覚情報など生き物としての情報収集感覚を駆使できるのは実際に会うことによってです。確かに文明の利器は便利です。今までつながれない人につながるかもしれない。そういう時代だからこそ会うということが大事なのです。全身で相手を観察する。受け止める。そして、自分も相手を自分の人脈として選ぶのです。

 皆さんの人脈構築にこの拙文が少しでもお役に立ったならば幸いです。

著者プロフィール:法政大学 ビジネススクール教授 高田朝子

モルガン・スタンレー証券会社勤務をへて、サンダーバード国際経営大学院国際経営学修士(MIM)、慶應義塾大学大学院経営管理研究科経営学修士(MBA)、同博士課程修了。経営学博士。専門は危機管理、組織行動。

主な著書『女性マネージャー育成講座』(生産性出版)、『人脈の出来る人 人は誰のために「一肌ぬぐ」のか?』(慶應義塾大学出版会)、『危機対応のエフィカシー・マネジメント −「チーム効力感」がカギを握る−』(慶應義塾大学出版会)、『組織マネジメント戦略 (ビジネススクール・テキスト)』(共著、有斐閣)


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