自己中心の視点から、「幽体離脱して自分自身を外側から眺めて見る」とさまざまなことが分かってくる。
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まず「メタ思考」とは何かを簡単に説明しましょう。
一言で表現すると、「メタ」というのは物事を一つ上の視点から客観的に眺めてみることです。例えば分かりやすい例が「自分自身を客観的に見る」ことです(図1参照)。
このように、自己中心の視点から、「幽体離脱して自分自身を外側から眺めて見る」とさまざまなことが分かってきます。
その例の一つが「自己矛盾への気付き」です。人は皆多かれ少なかれ自己矛盾の塊です。要は「言っていることとやっていることが違う」ということです。「他人にケチをつける」のは「自らの言動を正す」より何百倍(下手をすると何万倍?)も簡単であるのは誰もが感じていることでしょう。またこのことに気付くのが、「自分の言動」からでなく「他人の言動」を見た時が圧倒的に多いというのも皮肉な事実です。
ところが世の中はこのような自己矛盾に満ちた言動で溢れています。例えば以下のようなものです。
これらの言動の特徴は、本人はその「自己矛盾」に気付いていないことです。しかもそれを指摘でもしようものなら、間髪入れずに「いや自分は彼らとは違うんだ」という猛烈な反撃が来ることでしょう。他人から客観的に見れば「彼ら」とその人は全く同様に見えるのに……です。
人間というのは、多かれ少なかれこのような自己矛盾に満ちたものです。だからいかにそれに気付けるかがその後の成長にかかっています。
そのために、まずは身の回りのさまざまな事象に関して、何が本当の問題かを見極められるよう、問題そのもの(上の例で言えば自分自身)を一つ上の視点から眺めてみることも重要です。「自分自身」の例で分かるように、その中にどっぷり浸かりすぎていると本当の問題が見えてこないのです。
ビジネスにおけるさまざまな問題を解決したり、自らを成長させたりするために最も必要なことの一つが「気付き」です。「そもそも何が問題なのか?」「いま何ができていないのか?」「何が自分に不足しているのか?」……このように「そもそもの問題を自覚する」ことが問題解決の一歩になります。
哲学の父と言われるソクラテスは、古代ギリシア時代に「無知の知」という概念を説きました。彼が言わんとした重要なことの一つがそもそも「物事を知らない」という無知そのものが問題なのではなく、それを自覚していない、いわば「無知の無知」が問題だということです。
これは「無知」であることを一つ上の「メタの視点」で捉えるべきであることを意味しています。この他にも、メタのレベルで問題を捉えることが重要な場面はあります。
「論理的でない」人の本当の問題点は「どこが論理的でないかが分かっていない」ことです。「コミュニケーション下手」な人の問題点はそもそも「伝わっている」という前提でコミュニケーションをしていることで、下手をすると「伝わらないのを他人のせい」にしてしまっていることです。
「ダメな上司(部下でも同様)に向けた本」は当のダメ上司は決して読むことはありません。逆に言えば、その本を手に取った時点でその人は「本当のダメ上司」ではありません。真のダメ上司のダメ上司たる所以は、そういう話を聞いても決してそれは自分のことだとは思わず「いるよなあ、そういうダメなやつ」とすっかり他人事として捉えているところです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授