経営戦略の一環としての働き方変革――IT活用で生産性向上や組織のスピード化を実現ITmedia エグゼクティブセミナーリポート

いつでも、どこでも仕事ができる環境の構築で、働き方を変革することができる。そのためには、ITの活用が不可欠である。それでは、どのようにITを活用して働き方を変革すればよいのだろうか。

» 2017年01月17日 07時17分 公開
[山下竜大ITmedia]

 ITmediaエグゼクティブ編集部主催で「働き方の変革で人と組織にもっと活力を」をテーマにセミナーを開催した。ユーザー事例や、製品・サービスベンダーのエキスパートが登壇し、ワークスタイル変革に関する最新動向や、技術、製品の紹介などが行われた。

営業現場からIT戦略本部まで幅広くデータを活用

ソニー生命保険執行役員 本部長 IT戦略本部・共創戦略部・業務企画部 担当 長谷川樹生氏

 基調講演にはソニー生命保険(ソニー生命)執行役員 本部長 IT戦略本部・共創戦略部・業務企画部 担当の長谷川樹生氏が登場。「データが現場の活力を引き出した デジタルでも顧客に寄り添うソニー生命」と題して講演した。

 ソニーフィナンシャルホールディングスの1社であるソニー生命は、1981年より、ソニー・プルデンシャル生命保険として事業をスタートした。日本の生命保険市場においては後発であることから、他業界の優秀な営業マンを厳選採用し、生命保険のプロフェッショナルとして育成した「ライフプランナー」による営業制度を確立。まったく新しい生命保険販売により、生命保険業界に新風をもたらした。

 ソニー生命の中核を担うライフプランナーチャネルは、一層の陣容拡大と生産性の向上を目指している。大切なことは「Final 3 feet」へのフォーカスである。長谷川氏は、「お客様とライフプランナーとの間の3フィートにいかなる価値を提供できるかが重要であり、データの収集や活用もこの部分の価値提供につながるか否かがポイントとなる」と言う。

 近年デジタル化が急速に進みそのひとつの原動力が、2013年よりスタートした共創戦略プロジェクト「C-SAAF(Consulting Sales and Follow System)」で営業現場におけるデータ活用の中核となっている。申し込みから健康告知、査定結果の確認、そして契約後のコンサルティングフォロー、マーケティング支援、保全手続支援、顧客・世帯管理などのペーパーレス化、デジタル化を進め、PC上で完結するようになり、ライフプランナーはいつでもどこでもデータを見ることができる。また、ライフプランナーの活動を支援するマネージャーの仕組みもありセールスやアフターフォローのプロセスがリアルタイムで分かるため、適宜支援や確認ができる。

  「保険契約は紙が多く、手続きのために机一面に並んだ書類の説明に長時間を要し、何度も署名をしなければならないという経験をお持ちの方も多いかと思う。しかし、お客様本位の観点からより正確なリスクやプロセスの説明は必須。ペーパーレス化、デジタル化を進めているのは効率化しながらも、どうしたら多くの情報をある一定以上のスタンダードで説明ができるのか、お客様本位のお手続きの追及であり、現在好循環を生んでいる」(長谷川氏)

 2014年から開始したIT戦略本部のデータを活用した構造改革では、新規障害率を8割低減したほか、開発生産性の向上により、コストの削減も実現。長谷川氏は、「構造改革は、数値的にもプロセス的にも大きな変化で、すべてのプロセスでデータを駆使しながら、見直しを行っている」と話す。

 長谷川氏は「キー(KPI)を明確にし、経営、ユーザー、協力会社と情報を共有して、ゴールに向かっていくことが、さまざまな課題の解決や行動(働き方)の変化につながっていく。これも、ソニー生命が先進的に進めてきたデジタル化の大きな効果である」と締めくくった。

沸き立つ会社をつくり働き方を変革

ビジネスコーチ 代表取締役 細川馨氏

 特別講演には、ビジネスコーチ 代表取締役の細川馨氏が登場し、「"沸き立つ"会社のつくり方」をテーマに、ワークショップを交えながら講演した。細川氏は、「今日は皆さまが自発的にアイデアを出し、ワクワクしながら業績を上げる会社を作るために、リーダーが実践すべきことを体得することが目的だ」と始めた。

 「人間には、固定観念や思い込みなどの"思考の枠"がある。思考の枠が狭ければ、人の話を聞かなくなり、自分の価値観を押し付ける。狭い思考の枠が沸き立つ会社になることを阻害する。そこで、思考の枠をいかに広げるかが重要になる」(細川氏)。

 沸き立つ会社を実現するためには、まず部下との「関係の質」を向上させ、次に部下に考えさせることで「思考の質」を向上し、さらに「行動の質」、「結果の質」を向上させる組織成功循環モデルの構築が重要になる。細川氏は、「組織成功循環モデルにより、自発的に行動できる人材を育成するのが"グッドサイクル"である。一方、上司の思考の枠がせまく、自分のやり方に固執すると、部下が自発的に行動できなくなる"バッドサイクル"になる」と言う。

 関係の質を高めるには、エグゼクティブコーチングの第一人者であるマーシャル・ゴールドスミス博士が著書『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』で紹介した「20の悪癖の改善」が重要になる。例えば極度の負けず嫌い、きちんと相手を認めない、過去にしがみつく、責任回避するなどの悪癖が自身にないかチェックし、周囲の人から変革のアイデアをもらう「フィードフォワード」の実践が有効である。また、理論派、現実派、友好派、社交派それぞれの行動傾向を理解し、タイプ別に効果的なコミュニケーション方法、モチベーションを向上させる方法への取り組みも効果がある。

 講演の最後に細川氏は、「ある友人が、95歳の老人に"人生の目的とは何か"と聞いた。答えは、"幸せになること"であった。それでは、"幸せになるためにはどうすればよいか"と聞くと、"家族を大切にする、夢を持ちいますぐ挑戦する、死ぬまで勉強する、多くの人を助けることだ"と答えたという。この友人はマーシャル・ゴールドスミスであり、95歳の老人はピーター・ドラッガーである。皆さまが幸せになり、沸き立つ会社にするために今日体験したことを活用してほしい」と話した。

VDI、データレスPC、コミュニケーション基盤で働き方変革

富士通 サービス&システムビジネス推進本部 モバイルビジネス推進統括部 第一ビジネス部 部長 吉田和博氏

 セッション1には、富士通 サービス&システムビジネス推進本部 モバイルビジネス推進統括部 第一ビジネス部 部長の吉田和博氏が登場。「モバイルデバイスとVDIの良い関係 場所・時間・使い方に合わせた情報活用術」をテーマに講演した。吉田氏は、「オフィス業務にはVDI、営業・現場の業務にはモバイルアプリと、利用シーンに合わせて使い分けるのが富士通の提案である」と語る。

 VDIの導入には、「自社構築型」と「サービス利用型」の2つの方法がある。吉田氏は、「富士通では、自社構築型のサポートはもちろん、サービス利用型もV-DaaSで仮想デスクトップサービスを提供する。また、いつでも、どこからでも印刷できるPrintAnywhereも提供している。一方、モバイルアプリでは、MEAP(Mobile Enterprise Application Platform)サービスとして、MobileSUITEを提供している」と話している。

横河レンタ・リース システム事業本部 エンジニアリング事業部 事業推進部 ソリューショングループの福田大次郎氏

 セッション2には、横河レンタ・リース システム事業本部 エンジニアリング事業部 事業推進部 ソリューショングループ 福田大次郎氏が登場。「ワークスタイル変革=VDIの意外な落とし穴 最適解はデータレスPCだった」をテーマに講演した。ワークスタイル変革には、モバイル活用が欠かせないが、セキュリティの確保が課題となる。そこで、多くの企業でVDIが導入されている。

 「"ワークスタイル変革=VDI"と考えないでほしい」と福田氏。VDIは、テレビ会議などのアプリケーションが足かせになることがある。そこで最適解となるのが「Flex Work Place Passage」によるPCのデータレス化である。福田氏は、「PCのデータレス化により、少ない投資でセキュリティを高められる、ユーザーの生産性を低下させない、運用工数の削減などの効果が期待できる」と話している。

日本ブロードビジョン 法人営業統括本部 アカウントマネージャ 高島類氏

 セッション3には、日本ブロードビジョン 法人営業統括本部 アカウントマネージャの高島類氏が登場。「お客様事例から見るワークスタイル変革に必要な3つの要素と実践方法」をテーマに講演した。高島氏は、「ワークススタイル変革の実践では、マネージメント(管理)、エンゲージメント(連携)、レインフォースメント(強化)の"3つのメント(ment)"が重要になる」と話す。

 3つのメントの実践方法を、事例を交えて紹介。あるクラウドサービス事業者では、マネージメントで「シャドーITによるセキュリティリスクの増大」、エンゲージメントで「社内外の連携の阻害」、レインフォースメントで「ツールの乱立」という課題を抱えていた。高島氏は、「Vmosoの導入により、セキュリティ管理とコミュニケーションおよびナレッジの統合を両立することで課題を解決した」と話している。

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