復職した社員が配属された場合、どのように接すればよいか?管理職が学ぶべきメンタルヘルス・マネジメント(2/2 ページ)

» 2017年04月27日 07時27分 公開
[南雲文ITmedia]
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3、復帰後の働き方、配属先は?

 復職直後は短時間勤務からスタートし、徐々にフルタイムに戻すことがよいとされています。しかし、管理職からは「時短・残業なしとなると任せる仕事が無く困る」という話をよく聞きます。

 まずは管理部門で一旦復職し、体調を見ながら元の部門に戻すといった方法や、元の部署であっても担当業務は変えるといった方法を取ることが多いようです。このような場合は、休職者本人と今後の見通しをよく話しておく必要があります。

 休職者は復職にあたり、「遅れを取り戻さなくては」「今後しっかりと仕事ができるのだろうか」といった気持ちが少なからずあります。そのような中で、例えば開発部門にいた人が管理部門の庶務業務担当となった場合、「もう開発の仕事はできないのかもしれない」という思いから意欲が低下してしまうこともあるようです。

 体調を見ながら元の部署に戻すことをしっかり伝え、そのために今は時短から始めて、体を仕事に慣らす必要があることを理解してもらうことが大切です。ただ、業務内容があまりに単純であったり、手すきの時間が増えてしまったりするとそれが自責につながる場合もあるので、適度に本人がやりがいを感じられる業務を用意しましょう。

 また、元の配属先で復職した場合でも、これまでの業務がスムーズにこなせず、精神的な疲れから「自分はもうだめだ」と思いつめ再発に至る場合もあります。どの部門で復職しても、大切なのは焦らないこと、できていることに目を向けてもらうことです。

 納期のある仕事や責任が伴う業務は、本人と相談しながら負担感を調整し、少しずつ負荷を上げていくなどの方法を取ると、焦らず安心しながら業務に取り組め、自信も少しずつ回復していきます。

4、本人との面談、担当医師との連携の必要は?

 メンタルダウンによる休職と職場復帰という事実を、最も重く受け止めているのは休職者本人です。「これ以上迷惑は掛けられない」と考え、SOSの声を上げられない人も少なくありません。管理職が「何でも遠慮なく言って」「困ったら声を掛けて」と伝えても、声を掛けてくるとは限りません。

 第1回でも取り上げましたが、相談されるのを待つのではなく、顔色を見る、声を掛ける意識が大切です。一日に5分、10分でよいのです。本人に「気にしている」ことが伝わる行動を心掛けましょう。

 面談の時間が取れる場合、復帰後一週間は週に2回程度、その後の1カ月くらいは週に1回、2カ月目は2週間に一回というように、本人と話をしながら徐々に面談回数を減らしてみてはどうでしょうか。しかし、本人の調子が悪そうだなと感じた場合は上記に限りませんので、そのときは一時的に面談の頻度を増やす必要があります。

 また、職場では平然を装っていても、実は無理をしていて体調を崩す場合もあります。産業医や主治医ともコンタクトを取り、情報を共有しておくとよいでしょう。管理職1人で対応する必要はなく、産業医、主治医、人事などと連携し、チームで復職者を支えるようにしましょう。

 次回は、「心身ともに健康な職場とは」について見ていきましょう。


※「リワークプログラム」参考情報

 この他、各企業で提携しているEAPサービスの一環にリワーク支援がある場合もありますので人事と相談してみましょう。また、各地域にある就労移行支援事業所においても、リワークのための利用が認められるケースもあるようです。ただし、休職者本人がお住まいの行政の判断によるので、全員が利用できるわけではありません。

著者プロフィール:南雲 文(なぐも ふみ)

立教大学 社会学部卒業。メーカー営業職、CS部門を経て2004年にゼネラルパートナーズ入社。障がい者採用コンサルタント、キャリアカウンセラー、人事部門等を経験後、2012年に精神障がいの方専門の就労移行支援事業所シゴトライ台東の立ち上げに携わる。現在はシゴトライ台東施設長として勤務。

資格:米国CCE,Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラー。


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