人生100年時代、60歳を過ぎてあと20年か30年か何年生きるのか。残された日々を自分のやりたいように、自分らしく目いっぱい生きるには。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
60歳、区切りの年にビジネスマンの皆さんは何を思うのでしょうか。
私は54歳でいわゆるサラリーマン生活を終えました。そこから9年間、仕事と社会貢献、学びと遊びがリンクした毎日を送っています。「60歳定年」「65歳まで再雇用」より一足先に自由を手に入れ、働くことをエンジョイしているといっていいかもしれません。
現役時代に苦痛だった早朝の通勤電車の代わりに、ゆっくりと家を出て四季の移ろいを楽しみつつ仕事場に向かう。気の合う人たちと楽しく仕事をし、充実感を持って毎晩のように心地よい一杯に酔いしれる。20代から仕事を続けてきて、選び取った「今」だからこそ、とても幸せだと感じています。
人生100年時代、60歳を過ぎてあと20年か30年か何年生きるか知りません。でも残された日々を自分のやりたいように、自分らしく目いっぱい生きれれば本望です。60歳が視野に入ってきた方たちも「これから」を楽しみにしてほしいと思います。
定年後の具体的なプランを持っている60歳は意外に少ないのではないでしょうか。定年とは言うまでもなく、ある一定の年齢に達したら会社を辞めることか、辞める年齢のことですが、実は万国共通のものではありません。
アメリカやカナダでは、年齢による差別は法律違反なので、「○歳になると辞めなければならない」という定年はありません。
「引退」(a retirement age)というのは、自分の意思で引き際を決めることだから、リタイアメントは、「Happy retirement!」と明るく祝ってもらいます。自分で引退を決めるのだから、ほとんどが次の仕事には就きません。迷うことなく、楽しみにしていた年金生活に入ります。
一方日本の定年というのは、湿っぽい雰囲気ですよね。多くがある程度の我慢をしながらも、長年たゆまぬ努力をしてきたことに会社や家族や知り合いが「お疲れさまでした」と慰労の意味を込めます。「ここは学校じゃないんだ」と新人に厳しくハッパをかけていた当人が定年のあいさつで「今日、卒業しました」などと涙するのは、どんな気持ちなのでしょうか。
定年、老後という言葉にはどことなく暗い、もの悲しいイメージがついて回ります。そんなこともあって、定年になってどうしようと具体的に考えている人が少ないのかもしれません。
60歳から、引退してゆっくりするか、雇用延長に応じてその場で働くか、それとも別の職場で仕事を継続するかは、大違いです。自分で選べる自由を手に入れた今、楽しくこれからのことを考えましょう。
日本のビジネスマンは、組織への帰属意識が強く、どこの学校に通っているとか、どの会社に勤めているかとか、知らない人同士が話す時には、相手の所属が気になります。「どんなご職業ですか?」「どちらにお勤めですか?」と丁重に下手に出て、相手の所属を悪気なく聞いてしまうものです。
反対に、自分が組織に属していないと、何となく新しい人に出会いにくく、名刺がないと、話のとっかかりもありません。退職しても、自分からどこに勤めていたと言いたがる人は多くいます(知られた企業の場合は、である)。
また、敬語があるせいか、どちらが年上か分からないと話も進めにくいものです。何となく、両者の年の関係が分かると、先輩、後輩として話が進む。もしくは、同年代だと話しやすいですよね。
でもそろそろ、こうした慣習からも卒業するといいでしょう。
数年前のこと、東京浜松町の居酒屋で飲んでいたら、隣に若い外国人が4人来ました。ちょっと話しかけたらオーストラリアから来たと言い、それぞれ名乗りました。TomとかJeffだとかファーストネームだけ。
学校に行っているのか、会社で働いているのか全く話しません。Tomという人物であることが大切であり、所属は2の次。こちらはそれが気になるのだけれど、彼らは私が何をしていて、どこかの組織に属しているのか、全く気に掛けている素振りがありません。しばらくビールを片手に話しているうちに、私も単なる「Hiro」になっていました。
そんな感覚が、60歳からは欲しいものだと思った次第です。
定年後再就職しても、それから何十年と同じ会社で働くことはまずありえません。5年か長くて10年。実力があって貢献すれば役員に抜てきされ、もっと長く働くこともあるかもしれませんが、それを前提にアクセク働くのは、楽しい定年後の再就職とはいえません。どうせなら、楽しく、かつ感謝されて働きたいものです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授