ウェディングとは今までの人生を編集するプロセス――ウェディング業界の常識を覆してきたCRAZYが仕掛ける顧客サービスとは?経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(1/2 ページ)

ウェディング業界の常識を覆したいと2012年に創業。結婚するふたりへの細やかなヒアリングによって、世界でたった一つのコンセプトを作り出す。

» 2018年12月12日 07時17分 公開

 2012年7月に創業し、ウェディング業界の常識を覆してきたCRAZY。現在、年間約250組を手掛けるウェディングは、その全てが完全オーダーメイドだ。結婚するふたりへの細やかなヒアリングによって、世界でたった一つのコンセプトを作り出す。CRAZYでは、当日だけではなく、ウェディングに向けたプロセスを最も大切にしているという。創業から6年で1000組以上のウェディングに携わり、そこで得たエッセンスを新たなサービス「IWAI」に凝縮。今の時代に本当に必要とされる在り方を再構築する。創業に至った理由、新たな取り組みなど、代表取締役社長の森山和彦氏に話を聞いた。

人生を扱うからこそ、オーダーメイドのウェディングができる

井上 オーダーメイドのウェディング事業を立ち上げるに至った理由を教えてください。

CRAZY 代表取締役社長 森山和彦氏

森山 妻と2人で自分たちの結婚式を挙げたことがきっかけです。妻は結婚式を挙げることが大きな夢で、「オクトーバーフェスト」のような、みんなでワイワイ楽しみたいと思い描いていました。しかし、当時のウェディング業界では、多くのサービスがパッケージ化されていたため、自由度が低く、一般的な結婚式場では実現不可能でした。

 2人で結婚式場に行ったときには、結婚式を挙げる意味など聞いてくれず、「洋風の式か、和風の式か」「料理はどのコースにするか」「ウエルカムボードはここに置いてもらいます」など、どんどんパッケージの中で話が進んでいきました。何件か結婚式場をまわりましたが、どこも同じような形式でした。

井上 パッケージの中でしか選択できない形式に固められていたんですね。

森山 それでも、僕たちは結婚式の夢をどうしても諦めきれず、フリーのプランナーさんに依頼して、逗子の会場を特別に貸し切ってもらうことにしました。しかし、最初に出てきた見積もり額は、1300万円。その後、なんとか費用は下げましたが、巨大なスクリーンを自分たちで縫ったり、巨大なプロジェクターを仕込んだり、準備が本当に大変でした。

 結婚という節目に何かやりたかっただけなのに、自分たちがやりたいことを実現することがどれだけ難しいかを思い知りました。僕たちのように、自由に自分たちの理想の結婚式をかたちにしたい人は絶対にいると思い、を起業しました。

井上 オーダーメイドのウェディングとは具体的にどのようなサービスなのですか?

森山 コンセプト、会場装飾、進行、料理…全てがオーダーメイドで、2トントラックに物品およそ300点を積み込み、会場を作り上げます。社内のアートディレクターが好きな色やイメージなど、装飾の観点からヒアリングを行い、ふたりのイメージを絵コンテに起こし、かたちにしていきます。机から小物まで全て発注し、それを年間約250回以上行っています。

井上 思いがこもったウェディングは感動的でしょうね。

森山 私たちは、当日だけではなく、ふたりについてのヒアリングを行い、それぞれのこれまでの人生や、結婚する理由をプロデューサーが編集し、プレゼンしています。とても大事な瞬間で、涙する人もいるほどです。こうして、表面だけでは分からないお客さまが考えていることを引き出しています。

社員そのものが商品でありサービス、人間性を高める数々の取り組み

井上 お客さまのやりたいことをかなえるオーダーメイドのウェディングを実現するためには、社員の皆さんの思いがなければ成し遂げられません。採用や育成にはどのように取り組んでいますか。

森山 大切なのは、社員自身がサービスそのものであることです。お客さまに人生の感動を届けたければ、社員が人生に感動していなければなりません。

 CRAZYでは、ヒアリング方法を教えるのではなく、社員自身に体験してもらっています。全ての社員が入社時に1時間のライフプレゼンテーションを経験しています。お客さまへのヒアリングと同じプロセスで、入社した社員にプロデューサーを付け、バディとして2週間から4週間かけて人生を深掘りします。自分の生い立ちや重ねてきた選択、どうして会社を辞めたのか、家族背景や人生の転機になったことなど人生にまつわるあらゆることを深掘りします。そういったプロセスを全員が体験することによって、人生に対する解像度の高い組織が出来上がります。

井上 社員の健康についてもいろいろな取り組みをされているそうですね。

森山 創業期から経営の優先順位として、第1に健康、第2に人間関係、第3にビジネス、第4に誠実な経済活動と明確に定めています。人の幸せを下支えする最も大切なものが健康です。健康を維持するための取り組みとして、創業当時から行っているのが、毎日全員で同じ時間にランチを食べることです。質の高い食事を提供することで、健康を担保し、一緒に食事をすることで人間らしさも見えます。食事を共にすることは、欲の共有という意味で、特別な行為です。食べるのを見られるのは、ちょっと恥ずかしいことでもあります。それをみんなと共有することで、共同体になるんです。

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