ウェディングとは今までの人生を編集するプロセス――ウェディング業界の常識を覆してきたCRAZYが仕掛ける顧客サービスとは?経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(2/2 ページ)

» 2018年12月12日 07時17分 公開
前のページへ 1|2       

完全オーダーメイドがウリのCRAZYが新しいウェディングの形に挑むワケ

井上 創業から6年、たくさんのウェディングをプロデュースしてきた中で、どのカップルもここに行き着くという本質のようなものは見えてきましたか。

森山 多くの人が行き着くのは、やはり、親との関係です。創業から6年で1000組以上のウェディングを行ってきましたが、いずれも感動するポイントはやはり親と子のストーリーです。それまでの関係性を振り返り、新しい関係を結ぶことで、新しい家族になる。そのための儀式として結婚式があります。人生の総決算ができる結婚式の本当の意味はそこにあるのではないでしょうか。

井上 そういった6年間にわたる蓄積によって、新たなサービス「IWAI」をはじめるに至ったのですね。

森山 創業から6年の時を経て、自分たちが何者なのかが明確になり、2018年7月にビジョンを “To celebrate your life the most in the world.” 「世界で最も人生を祝う企業」に変更しました。多くの人のウェディングに携わったことで、「人生を編集する」プロセスを開発し、新しい形のウェディングを「IWAI」として、2019年2月にローンチします。

井上 どういったところが新しいのですか?

森山 これまでのウェディングは、結婚するふたりを中心にまわっていました。IWAIで実現するのは、ゲストを中心とした参加型のタイプです。プロセスの中で、ゲストへのヒアリングもあります。

 招待するのは、本当に呼びたい人たちだけです。ゲスト一人ひとりへ書いた手紙は、会場に到着した際に届けられ、会場には、ふたりの思い出の品々が飾られています。結婚式では大切なゲスト一人ひとりの他己紹介を行い、ゲストからふたりへメッセージを書く時間もあります。式が終わったあとは、自分の別荘のようなアットホームな空間での打ち上げ(オープンパーティー)です。入場も、席順も、ケーキカットもありません。星付きのシェフが考案した最高の食事をみんなで楽しんで盛り上がります。

 IWAIのために、それぞれの分野の第一線で活躍する人たちと組み、全てゼロから開発しています。ちなみに、持ち込みはドレス、カメラ、ビデオ、全て無料です。招待状の発送など、準備は全てIT化されており、ふたりがすることは、招待客を決めること、全員に対して手紙を書くこと、誓いの手紙を書くことの3つだけ。準備を自動化することで、人生の編集という本当に大切なことに集中できるようにしました。

井上 IWAIはどんな人たちに向けて作ったサービスなのですか?

森山 従来型のウェディングは嫌だという人たちが駆け込む場所になりたいと思っています。ターゲットは、式を挙げる人と挙げない人の境界にいる人です。サービスをできるだけシンプルにして、箱貸しのスタイルに近いものにします。自分たちでパーティをするのに近いけれど、プロデューサーという第三者が介在することで扱える、家族の深い話など、その場所だからこそできる話があります。

 ウェディングのことを「披露宴」といいますが、SNSで自分の近況をいつでも発信できてしまう今の時代、もう周りに「披露」する必要はなくなっています。だからこそ、本来の結婚式の意義に立ち返ったり、再定義したりする必要があります。IWAIは「結婚」を祝う場所だけではなく、実は“点”のように見える人生を“線”で祝う場所でもあります。人と人との結び付きを再確認することで、新しい家族になることを目指しました。

森山氏(左)と聞き手の井上氏

対談後記

 「これだけ思いを持って事業に取り組んでいる経営者がいるのか!?」そう感じるほど熱く、ワクワクしながら語っていただいたのが印象的でした。創業当時の結婚式は画一的でパッケージ化されていたこと、自分たちの思いをかたちにするのが困難だったこと。森山夫妻の実体験からくる「結婚式を何とかしたい!」という当時の気持ちがCRAZYに強烈に反映されて、現在多くの支持者を集めているのだと思います。

 自分たちは結婚式を扱っているのではない。人生を扱っているのだ。この言葉の通り、プロデューサーというふたり専属の担当者が徹底的に新郎新婦やその家族、参加者にまでヒアリングをし、人生を編集する。式を挙げる前には分からなかった、パートナーや家族、お世話になった方への思いが式の準備を通して明確になり、感謝が芽生えるのは間違いありません。

プロフィール

井上敬一

ブランディングコミュニケーションデザイナー

株式会社FiBlink代表取締役

兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み1カ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1600万円の売り上げを達成。業界の革命児として、関西最大規模のホストクラブグループの経営業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。また、Webセミナー「プレジデントキャンパス」により、中小企業経営者の学びの場をもっと身近なものにして日本経済をけん引する役割を目指す。

圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルを分かりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。これまで数多くのメディアに取り上げられ、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で8年にわたり密着取材され、シリーズ第6弾まで放映されている。

 主な著書に、「ゴールデンハート」(フジテレビ出版)、「人に好かれる方法」(エイチエス株式会社)などがある。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆