どの企業でも人材不足、採用難が叫ばれる中、リテンションやモチベーション向上による現有戦力最大化が、企業経営の重要な命題となっている。
近年、人事に関する経営課題の重要度が増している。「リモートワーク」・「ダブルワーク」といった新しい働き方、「ダイバーシティ/インクルージョン」に代表される多様性の受容と活用、社員のリテンション(定着)向上や組織力底上げのための「タレントマネジメント」など、経営課題になりうる人事テーマの注目度は高い。中でも、どの企業でも人材不足・採用難が叫ばれる中、リテンションやモチベーション向上による現有戦力最大化が、企業経営の重要な命題となっている。
当社ローランド・ベルガーにおいても、人材が最大の資産であり、人材の質が顧客への価値創出に直結する業として、社員の量的・質的拡大、そのための成長加速の取り組みは、企業としての根幹である。特に近年、顧客への価値提供に必要な能力の定義、定義した能力を持っている人材の見える化、必要能力に照らした人材配置、社員の成長加速に注力している。本稿は、筆者らが考える「能力ポートフォリオの見える化による適所適材の高度化、変革の加速」について、考察させていただきたい。
新規事業を例にとると、その成否は、何をやるかと誰がやるかに分解される。何をやるかは、論理的に否定されない限りは、やってみないと分からないし、実際やりながら変わっていくものと割り切り、新規事業が実現を目指す世界感が正しいと信じられるならば、その手段はあの手この手を試しながら、スピーディーに進化させることが求められる。
かつ、できるだけ手戻りなく、最短コースで仮説構築、検証、修正のサイクルを回すことが重要となる。世の中の成功事例を見ても、順風満帆に計画通りに物事が進むことはまれで、多くの難題や障壁を乗り越えた結果である。つまり、誰がやるかも、達成の確度やスピードを大きく変える。組織の将来を左右する変革においては、誰がやるかはまさに戦略そのものであり、変革に向けた取り組みには従来とは異なる能力・資質が求められるため、一部の属人的な判断に依存すべきではない。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授