令和の時代だからこそ振り返りたい部下育成5つの心得部下から信頼されるエグゼクティブとは(2/2 ページ)

» 2019年08月19日 07時06分 公開
[朝倉千恵子ITmedia]
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 もちろん最初からうまくいった訳ではありません。「朝倉さんだから」と契約してくださっていたお客さまも多く、どちらも最初はクレームの嵐でした。しかし数々の失敗を経る中で、部下たちは確実に成長をしてきたのです。「自分がいなくなったら困る」「自分がやらなければ…」もしかするとそれはおごりなのかもしれません。

 「○○さんにはまだ早い」。そんなことを考えてしまうのは、部下の能力に問題があるのではなく任せる側の上司の覚悟が足りていないだけです。

心得その4:「上司と部下は合わせ鏡だと自覚すべし」

 部下に最も信頼される上司とは、どんな人だと思いますか? それは自らの上司を尊敬し信頼する人です。部下は上司の姿をとてもよく見ています。直属の上司が、さらに上級の上司に接している姿勢や態度も部下は敏感に見ています。部下の前で上級上司の愚痴を言う。そこまで露骨なことはしなくとも、上級上司への尊敬心や信頼感は日常の何気ない言葉やふとした時に表れます。自分は上司のことを尊敬していないのに、部下からは尊敬されたい。そんなに都合よくはいきませんよね。

 私はよく「上司と部下は合わせ鏡」という言葉を使います。上司の手抜きと部下の怠惰は同じです。上司が仕事をするうえで「まぁこのくらいでいいか」と思ってしまった瞬間に、部下に対する指摘もなくなります。例えば営業の数字を追いかけている時に、上司が目標を妥協してしまうと上司も部下に指摘をしなくなり、部下も「まぁいいか」と妥協をしてしまいます。つまり結果的に部下も上司のねまをするようになり、上司と部下は合わせ鏡といえるのです。

 部下を成長させたい、と思うのであればまずは自らが模範となるような行動を心掛けることも必要です。

心得その5:「部下に嫌われることを恐れてはならない」

 上司が部下に厳しいことを言えない、これは経営者の大きな悩みの種です。特に最近はパワハラの問題も相まって、ますます上司が部下に厳しいことを言えなくなっています。この連載の2回目でも伝えましたが、優しいだけの甘い上司では部下の仕事観は育まれません。

 部下の小さなミスに気がついたとき、どうしていますか? ここで、「小さなミスだから今回は見逃してやるか」と目をつぶってしまっては、いけないのです。小さなミスはやがて大きなミスにつながります。部下は「いちいちうるさい」「いちいち細かいことを言うな」そんなことを思っているかもしれません。

 ネガティブなイメージのある「いちいち」という言葉ですが、本来の意味は「一つ一つの物事、一つ残らず、一つ一つ」を表すとてもいい意味なのです。管理者がいちいちうるさいと、部下のくだらないミスがなくなります。

 とはいえ、部下の側からすると口うるさく耳の痛いことばかり言ってくる上司の存在は疎ましく感じることもあるかもしれません。それでも、やはり言い続けなければいけないのです。どんなに部下から好かれている上司でも、部下が結果を出せるように育てられなければ、リーダー、上司とはいえないのです。

教育には本気と根気と覚悟が必要

 リーダーの仕事は部下の能力を更に引き上げることです。仕事力をしっかり身に付け、どこに出ても恥ずかしくない、仕事ができて愛される人財を育成することです。一度や二度言ったところで、できるようになるはずはありません。本気と根気と覚悟を持って何度でも部下と向き合っていかなければなりません。しかしどんなに部下のことを思っていたとしても、時に部下からは疎んじられることもあります。

 不思議なことに上司のありがたみは、離れた後に分かります。自分が上司になって、部下を指導する立場にたって初めて、あのとき上司が言っていた言葉の意味を理解するのです。「いつか分かればいい…」そう思って根気よく部下と向き合う姿勢こそ、時代を超えて求められる上司、リーダーの在り方ではないでしょうか。

著者プロフィール:朝倉千恵子(新規開拓 代表取締役社長)

小学校教員を経て、一般企業の営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。

04年株式会社新規開拓を設立。現在までに延べ17万人の社員研修・人材教育に携わる。

女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、TSL「トップセールスレディ育成塾」を主宰。卒業生は2500人を超える。

著書は全39冊、累計売上部数は約48万部。主な著書に、『コミュニケーションの教科書』(フォレスト出版)、『すごい仕事力』(致知出版社)ほか多数。最新著は『仕事も人生もうまくいっている女性の考え方』(あさ出版)。


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