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» 2019年11月26日 07時03分 公開

イノベーションの実現に欠かせないこと既知とアイデアの組み合わせで市場を変えろ(2/2 ページ)

[永井俊輔,ITmedia]
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本業の利益を使って挑戦を繰り返す

 アイデアをカタチにする際の2つ目のポイントはリスク管理です。「いける」と思った自信満々のアイデアでも、実現性や収益性は分からず、期待したほどもうからないこともあります。

 そのリスクを抑えるために、最初から全力投球するのはやめた方が無難です。スモールスタートを意識して、商品なら試作品、サービスならお試し版などから始めましょう。試してもらいながらユーザーの意見や反応などを確認し、必要な調整などを加えていけば、安定的かつ低リスクでLMIを進めていくことができます。

 スモールスタートに抑える目安として、開発などにかかるコストはレガシー事業(本業)で得た利益の一部に収まるようにしておきます。仮にうまくいかなかったとしても損益計算書上で大きな赤字にならない程度に抑えられれば理想的です。

 実は、レガシー企業は試作品やお試し版を作りやすいという利点があります。

 新規で市場に参入するベンチャー企業や異業種の会社は、試作品やお試し版を作るためのコストを外部から調達しなければなりません。しかし、レガシー事業はレガシー事業を通じて着実に利益を得られるため、その利益の範囲を超えない限り、何度でも挑戦でき、何度でも失敗できるのです。

 言い方を変えると、LMIに成功し、新たな商品・サービスを世に送り出すまでは、レガシー事業(から得る利益)を死守しなければならないということです。

 また、ベンチャー企業などとの比較でもう一点有利なのが、試作品を作れる設備や知見があり、お試し利用してもらう顧客とのコネクションもあることです。

 新規参入の場合は、商品・サービスを作るだけでなく、試し、評価し、感想をくれる人を探さなければなりません。ものづくりをする場合は材料の調達先を探し、作るための設備や、作ってくれる協力者も必要です。

 レガシー企業は、そういったプロセスを飛ばすことができます。取引先などとも長年の付き合いと取引が裏打ちする信頼関係ができていますので、率直な意見を聞きやすく、改善に向けた有益なヒントも入手しやすくなります。

社内の反応を見てブラッシュアップ

 試作品やお試し版はあくまでもユーザーの反応を見るためのものですから、そこそこの完成度で十分です。商品やサービスの肝となる部分ができたら、それ以上の手間や時間をかけるより、実際に使ってもらい、意見や感想をもらいましょう。

 また、社内のスタッフにも使ってもらい、反応をもらうと良いと思います。理由は2つあります。

 1つは、より具体的な意見が聞けますし、高度な知識や専門的な技術を持つスタッフに使ってもらうことで、商品やサービスを磨けるためです。

 クレストHDを例にすると、エサシーという視認効果を測定できる看板を作っていく過程で、ガーデニングの小売店であるインナチュラルで効果を試しました。複数の事業を展開する企業などは、グループ内のネットワークなどを有効に使うことで商品・サービスがブラッシュアップしやすくなります。

 試作品を社内で使ってもらうもう1つの理由は、試作品というカタチになっているものを見てもらうことにより、LMIに懐疑的なスタッフが「何かが変わろうとしている」「自分たちが市場を変えられるかもしれない」と思ってくれる可能性があるからです。

 アイデアの段階では机上の空論と捉えられてしまうこともあります。新しい商品など自分たちには作れない、そんなことは夢物語だと考える人もいます。しかし、実物を見ると感想は変わります。

 「面白そうだ」と思ってもらったその瞬間から、懐疑的だったスタッフもLMIの協力者になるのです。

夢と志を持って未来へ踏み出そう

 社外、社内の意見を踏まえ、必要な修正や改善などを行った結果、「うまくいきそうだ」と判断できる状態になったら、いよいよ本格的に売り出します。試作で様子を見る実験的なステージを出て、新たな事業としてスタートしましょう。

 ここまでたどり着いた時点で、すでに商品・サービスは十分に磨かれているはずです。社内の協力者も増えています。

 イノベーションを起こすという大きな夢は、目に見えるカタチになりました。市場を変えるという志を、会社全体で共有できるようになりました。あとは自分たちの未来を信じて、突き進むだけです。

 業種や業界は違いますが、これからLMIに取り組むみなさんと、LMIを支援するわれわれは同じ視点に立っています。ともにイノベーションを起こし、ユーザーに感動を与え、レガシーマーケットを変えていきましょう!

著者プロフィール:永井 俊輔(ながい しゅんすけ)

クレストホールディングス 代表取締役社長。1986年群馬県生まれ。早稲田大学卒。株式会社ジャフコでM&Aやバイアウトに携わった後父親が経営する株式会社クレストに入社。CRM(顧客関係管理)やマーケティングオートメーションを活用して4年間で売り上げを2倍に拡大し、クレストをサイン&ディスプレイ業界の大手企業に成長させる。2016年に代表取締役社長に就任。ショーウィンドウやディスプレイをWeb同様に正しく効果検証するリアル店舗解析ツール「エサシー」を開発するなど、リアル店舗とデータサイエンスの融合を目指す。成熟産業にITやテクノロジーを組み合わせ、新たな価値を生み出すLMI(レガシーマーケット・イノベーション)に尽力。


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