連載
» 2020年01月15日 07時09分 公開

サイバーセキュリティマネジメント海外放浪記:発展目覚ましいアジア諸国と日本、この10年の決定的な違い (1/2)

いろいろな国を放浪していると、さまざまな文化や考え方に触れるため、どうしても日本と比べてしまう。

[鎌田敬介,ITmedia]

文化の違いを感じる国際活動

 いろいろな国を放浪していると、さまざまな文化や考え方に触れるため、どうしても日本と比べてしまいます。「日本人がお酌をするのはなぜか」と聞かれて調べてみたり、「日本人は駅のホームで別れ際に頭を何度もぴょこぴょこと下げるがあれは何の意味があるのか(おもに宴会後のサラリーマンのことを指している)」、同じく「別れ際に車が見えなくなるまで外で立っているのはなんなのか」など、さまざまなことを聞かれます。

 価値観の違いはこんなところにも。マレーシアの友人に紅葉の写真を見せたときに「葉っぱの写真なんか撮って何が楽しいの?」と聞かれたのですが、彼にしてみると、一年中暖かく自然が色とりどりなのは当たり前で、日本の秋独特の色づきには何の感慨もないようでした(けれども当人が日本に来たときに新宿御苑に連れて行き、秋の紅葉をみせたところしっかりと感動していた、という後日談があります)。

ALTALT そのときに実際に見せた紅葉の写真(筆者撮影)

 これはあくまで一例ですが、日本では当たり前のことが海外の人には不思議に思える、ということによく遭遇し続け、どこの国の人にも通用するように意識して行動するようになっていった気がします。そうこうしていると、だんだんと日本人的な感覚を失っていく自分に気づきます。最近は、日本社会の常識を守りつづけることはほぼ諦めています。「宴会の締めのあいさつもできないのか」と笑われることがありますが、知らないものは知らないし、昔ながらのやり方を踏襲しなければならない必要性も感じません。定型的な対応が必要なのであれば、それができる人に頼んでほしいです。

トレーニングをするようになって自分が得られたもの

 前置きが長くなりましたが、今回はセキュリティ技術者向けのハンズオントレーニングや、管理者向けの机上演習の実施経験から感じたことをご紹介します。

 私のこれまでのキャリアの中で、セキュリティのトレーニングを多く行ってきました。2007年頃から、主に海外のセキュリティ技術者向けのハンズオントレーニングや演習を行ってきました。

 当時の私はロクに英語もしゃべれなかったのですが、月曜から金曜、朝9時から夕方5時まで、英語でトレーニングをし続けました。助けてくれる日本人はおらず、講義資料の作成も説明も質問も全部自分で対応しなければなりません。そういうセルフスパルタ英語教育を続けていたら、いつの間にか仕事で困らない程度には英語が話せるようになりました。初期のトレーニング受講者はすこぶるヘタクソな英語で付き合うのも大変だったろうによく5日間も耐えてくれたと感謝しています(当時の参加者に今でも会うことがありますが、笑い話のネタにされます)。

 こういったトレーニングは、どこかの国の政府機関に依頼されて実施する場合もあれば、国際的なセキュリティカンファレンス会場の一室で行う場合もあります。ハンズオントレーニングの場合には日本から機材を持って行ったり、現地で借りたりしますが、ネットワークの敷設からセットアップした環境の確認などいろいろ手間がかかります。セキュリティの技術研修になりますので、会場のネットワークのセキュリティ対策機器によって外部との通信が遮断されてしまったりすることもよくあります。このため早めに現地入りして調査するのですが、昨日大丈夫だった通信が今日になったらダメになったということもしばしばあるので、ネットワークを使う場合の環境準備はいつもヒヤヒヤしています。

 ハンズオントレーニングを始めた頃は、課題を出して一人一人にそれを解いてもらう方式でやっていました。さまざまな手法を試してみましたが、その中でも特に記憶に残っているのは日本の塾のように回答が分かったら紙に書いて、前に持ってきてもらい、○×をつける方式を試みたところ、「これは日本ではよくあるやり方なのか?」と聞かれたことです。これもまた、日本独自の方式なのかと思った記憶があります。今ではオンライン回答フォームを用意してそこに記入してもらうようにしています。

 こういった形であちこちでトレーニングをやると、さまざまなトラブルも経験しますので失敗しない環境構築をする能力や土壇場でなんとかする能力、トレーニング自体の運営ノウハウなどさまざまなスキルが身につきます。最近は仕事として技術的なことを担当する機会はめっきり減りましたが、普段からトレーニングの環境構築などをしていることでリハビリにもなるし新しい技術に触れる機会も少なくありません。

先方が用意してくれたケーブルが信用できないことも多々あるため場合によってはケーブルすらも持ち込む。

参加者にとって効果を最大化する工夫

 ある時期からは、なるべくグループになり参加者同士で議論しながら問題に取り組んでもらうようにしているのですが、このやり方になってから、理解度が上がったように感じています。参加者のフィードバックには、「他の参加者の考え方が聞けてよかった」とか「自分が想定できていないポイントが明らかになった」とか「継続して情報交換できそうな関係を構築できた」といったものがあり、講師と参加者という一方向のやりとり以上にさまざまな効果があると感じています。

 この参加者同士の関わり方もさまざまなパターンがありますが大きく3つに分けて特徴をご紹介します。

グループが皆同じ国からの場合で参加者が皆同じ組織の場合

 まず全員同じ組織で同じ国からの参加者では、言語の問題は生じません。また、同じ組織からの参加者なのでハンズオントレーニングにしろ机上演習にしろ自組織のことを想定して議論を進めます。「こういうことが起きたら○○さんに相談するよなあ」とか「自組織の場合これは起きないよなあ」とか、議論の内容がより具体的になり、その組織にとっての課題の発見につながることは多いです。

 マイナスの側面としては参加者自身があくまで自組織のルールや業界特性から外れて考えることができないという特徴があります。このグループの分け方だと、参加者からは「自組織に足りていない点が分かった」とか「同じ問題に対する他部署の考え方を聞けてよかった」いうコメントが多く出てきます。

参加者全員が同じ国だがそれぞれ違う組織からの場合

 参加者全員が同じ国の場合は、言語の問題が無くコミュニケーションがスムーズです。一方で、それぞれが違う業界や組織から参加してるので、法規制に対する考え方、何か問題が起きたときの優先順位、対処方針の考え方など参加者それぞれで違う価値観を持っており、双方の考え方ややり方を議論しながら対応を検討します。

 最終的にグループ発表を課している場合には、グループとしてどうするかを決める必要がありますので、それなりに議論が白熱することもあります。このグループの分け方だと、参加者からは「他の組織(または人)の考え方や理由が学べて良かった」というコメントが多くでてきます。

同じ国(この写真ではベトナム)からで別々の組織からの参加者が議論しながら課題に取り組んでいる

グループ参加者が多国籍の場合

 このグループの分け方では、コミュニケーション手段が基本英語になる(参加者のほとんどが英語が母国語ではなく、英語に慣れ不慣れの差異が出てくる)ので、英語のコミュニケーション能力の高い人がグループの議論をリードするようになります。技術的知識が豊富な人ほど英語が苦手だったりする傾向はあるので、グループとしての議論は真の実力が発揮されにくいのですが、一方で参加者同士の関係構築という観点では多様な考え方に触れたり、関係構築もできたりというメリットがあるようです。多国籍な参加者の場合にコミュニケーションの問題をどの程度考慮するかというのは難しいのですが、なるべく参加者同士のコミュニケーションがとりやすくなるように配慮してグループ分けをしています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆