連載
» 2020年04月06日 07時05分 公開

視点:カーブアウトM&Aを成功に導く4要点 〜スピンオフ・インデックス変調を超えて〜 (1/2)

グループ内子会社や事業部門を戦略的に外部に切り出す「カーブアウト」の動きが拡がっている。企業マインドは確実に変わりつつある。

[田村誠一,ITmedia]

戦略的カーブアウトの隆盛

 グループ内子会社や事業部門を戦略的に外部に切り出す「カーブアウト」の動きが拡がっている。「事業売却案件の4分の3は、慢性的な業績不振に対する資本市場からの圧力に屈した『消極売却』、消極売却の3分の2は、最適な売却時機を逸した『逸機売却』」と言われた2000年代初頭からおおよそ20年。企業マインドは確実に変わりつつある。

 「カーブアウト」と言っても、子会社上場による「エクイティ・カーブアウト」、子会社全株式を親会社株主に配当として比例分配する「スピンオフ」、第三者へ売却する「トレード・セール」など、形態はさまざまだ。

スピンオフ・インデックスの変調

 過去3年以内のスピンオフ銘柄で構成される「Bloomberg US Spin-off Index」。2015年以降、ほぼ一貫してS&P 500を上回るパフォーマンスをあげてきたが、ここにきて変調をきたしている。(図A1参照)例えば、スイスに本社を構えるGarrett Motion。米Honeywell International輸送システム部門のスピンオフ(2018年10月)だが、スピンオフ以降の1年間で株価は45%値下がりするなど低調が続く。昨年末にはアスベスト関連債務を巡り、出自の米Honeywell Internationalを訴えた。

A1 スピンオフ銘柄のパフォーマンス推移、A2 「WHY」「WHAT」「HOW」vs.「WHO」

 カーブアウトは、切り出す側(RemainCo)、切り出される側(NewCo)双方にとって、企業価値の創造手段にも毀損(きそん)手段にもなりうる。改めて、カーブアウトの要点を整理しよう。

1)WHY:目的を定義する

 カーブアウトの目的はさまざまだ。複数事業から成る大企業は、コングロマリット・ディスカウントを回避すべく、事業ポートフォリオ再構築手段としてカーブアウトを活用する。これにより、RemainCoはコア事業への集中的な資源投下が、NewCoは成長資金の調達や機動力向上が可能になる。

 一方、近年注目されるのが、新規事業創出を加速するカーブアウト。大企業の社内規格に適合しない有望事業を切り出し、外部の専門人財や資金の下で事業化を図ろうとするものだ。昨年9月、デンソーが医療IoT事業をカーブアウトし、ベンチャーキャピタルのBeyond Next Venturesをパートナーに新会社「OPExPARK」を設立したことは記憶に新しい。

2)WHAT:境界を設定する

 次に、RemainCoと NewCoの線引き。実務的にはここが非常に難しい。いわゆる「Stand-Alone Issue」 の扱いだ。カーブアウト後のNewCoに知的財産権、ブランド、シェアードサービス、あるいは施設・設備の使用をどこまで認めるのか。認めればRemainCoの企業価値希薄化リスクが、認めなければ NewCoの企業価値毀損リスクが顕在化する。

 売り手と買い手では、RemainCoとNewCoの線引きへの期待が根源的に異なる。 PMI初期段階(通常、12〜18カ月間)におけるTSAs(Transitional Service Agreements、移行サービス契約)締結など、売り手(RemainCo)、NewCo、買い手のWIN-WIN-WINマネジメントが鍵を握る。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆