考える時間が短いと、すぐに回答がでないのでは。もっと深く考えてほしい。そんなときの上司対応は。
「10秒会話」と聞いて、どのようなイメージをするでしょうか? 「10秒会話」とは、3秒で質問し、7秒で考えさせる新人との最小単位の対話のことを表します。
前回は、新人に同行営業を頼まれた上司が、商談開始前にできる「10秒会話」の具体的なフレーズ、「今日の商談のゴールはどこにおいているのかな?」などを紹介しました。
第3回目は、10秒会話を使いこなすための意識改革、特に、直接、“立ち去る意識”と“会議を育成に生かす意識”について紹介します。
10秒で新人の力を伸ばせる。そう言われても、読者の中にはこう疑問に思う人もいるでしょう。
「そんなに早く新人から回答が返ってくるのかな?」「もっとじっくり考えさせないといけないときもあるのではないかな?」確かに、考える時間が短いと、新人の口からパッと回答がでないこともあるかもしれません。また、そもそも、もっと新人に深く考えさせたいというときもあるでしょう。
でも大丈夫です。そんなときは、質問だけして、その場を立ち去ればいいのです。新人との同行営業の例で説明しましょう。
新人は、今回の商談のゴールを「お客さまと良い関係を構築すること」としていたとします。しかし、「良い関係を築く」というふわっとしたゴールだったため、大事な局面で遠慮してしまい、お客さまに踏み込んだ質問ができず、次のアポイントをとる機会を逸してしまいました。
上司は、商談が終わったあと、すぐに次のアポイント場所へ移動しなければなりません。新人とは別行動になるので、ゆっくりと話している時間はありません。
そこで別れ際に、こう伝えるのです。「商談のゴールはどこに置くべきだったか、メールで送ってもらえるかな?」このフレーズを伝えるだけなら、3秒程度しかかかりません。そして伝えたら、心おきなく次のアポイントに向かえばいいのです。
一方で新人は、次の訪問先へ向かう電車の中で、この質問の答えを考えることになります。会社に戻るまでにはある程度の時間があるでしょうから、それなりの返事をメールで送ってくるでしょう。
上司は、送ってもらった新人の考えに対してアドバイスをすればいいのです。その際は、直接でもいいし、メールで返答するのもありです。いずれにしても、時間をおいて新人がしっかりと考え抜いた意見へのフィードバックになるので、指導者のアドバイスも的を射たものになります。
指導者からすれば、10秒で伸ばす時短質問を投げかけるだけで、その場にいなくても効率的な育成ができるのです。的確な質問を通じた「宿題」を出すことで、互いに時間を有効活用できます。
(新人と同行して商談を終えたあと)
「商談の失敗要因をメールで送ってもらえるかな?」
「商談の成功要因をメールで送ってもらえるかな?」
新人との育成でのやりとりを「10秒」という時間に凝縮する時短質問の大切さについて述べてきましたが、それを活用する場面がどこにあるのかを考えるのも、あわせて大切なことです。
10秒会話で指導できる場を考える際には、会議の場を指導の場に変える意識改革が特に必要です。ここでは、毎週実施されている進捗確認の会議の場を、育成の場として機能させるにはどうしたらいいのかを考えていきます。
例えば、営業部門における進捗確認の場はどうでしょうか。
まず、新人の進捗確認の場は、進捗確認を最小限にし、重要課題を引き出し、それについて考えさせる場とする必要があります。具体的には、指導者は次のような10秒で伸ばす時短質問を新人に投げかけます。
「今週の重要課題と次週に向けたアプローチを説明してもらえるかな?」
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明治学院大学 経済学部准教授