パッと見て読みにくそうな文章は、この時代、読んでもらえない。どうすれば読んでもらえるのか?
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文章は、読者が読むものです。読者に読んでもらえて初めて、文章は文章になります。そのためには、読みやすいものでなければなりません。しかし、「自分の文章は読みやすい」と自信を持って言える人が、はたしてどのぐらいいるでしょうか。
本書は、「自分の文章は読みやすい」と自信を持って言えるようになるための、さまざまなエキスがぎゅっと詰まった文章読本です。
本書における、文章の読みやすさのエキスの特徴は、すべて「見やすさ」と関係があります。なぜなら、パッと見て読みにくそうな文章は、この時代、読んでもらえないからです。
現実の世界にも、バーチャルなインターネットの世界にも、無数の文章があふれており、私たちはそのなかから自分に合うものだけを選びだして読みます。書き出しが一目で頭に入らない文章は、続きを読む気が起きません。にもかかわらず、「見た目」に配慮が行き届いた文章は、案外少ないものです。
文章を書くことに夢中になると、書き手の意識は内容にばかり向かいます。その結果、文章の「見た目」がおろそかになってしまうのです。検索機能が極端に発達した現代は、中身がよければ読んでもらえる時代ではありません。検索画面に並んだいくつもの文章を比較して、パッと見のよいものがクリックされて読まれる時代です。そのため、文章を見やすくする工夫が何より重要になるのです。
本書では、文章を見やすくする工夫を五つのポイントに分けて紹介しています。その五つとは、(1)記号、(2)文字、(3)レイアウト、(4)構成、(5)表現です。以下で順に紹介していきましょう。
(1)記号では、句読点、カッコを中心に扱っています。たとえば、読点。次の文を読んで、意味がすぐにわかりますか。
・寝たきりになって布団のなかだけで生き物が食べられなくなったらどうするのか。
このような文は、読点が一つあれば、文の構造がすぐにわかるようになります。
・寝たきりになって布団のなかだけで生き、物が食べられなくなったらどうするのか。
カッコも要注意です。最近、カギカッコをつけすぎる人が増えています。
・「よい子」は周囲の「顔色」をうかがい、期待されている「答え」に従って「行動」してしまう。
この文では、「よい子」「顔色」「答え」「行動」の四つにカギカッコがつけられています。そのなかで、ほんとうに必要なカギカッコはどれでしょうか。
おそらく「よい子」だけでしょう。「よい子」だけが、本当の意味でのよい子ではないという、いわゆるの意味でつけられているからです。それ以外の三つのカギカッコは単なる強調で、かえって文の焦点をぼやけさせてしまう目障りな存在です。
(2)文字では、フォントやサイズ、片仮名と漢字の使い方に言及しています。ここでは、片仮名の使い方について示しましょう。
片仮名は、英語を日本語に取り入れるときに使う外来語の文字だと思っている人は多いでしょうが、じつはそれだけではありません。
たとえば、トヨタやスバル、ホンダやヤマハなど片仮名の社名が多くあります。豊田や昴、本田や山葉では社名には見えないでしょう。最近では、TOYOTAやSUBARU、HONDAやYAMAHAとローマ字書きされることも増えています。ヒロシマやナガサキ、フクシマやオキナワも同様の傾向が見られます。固有名詞は国際的知名度が上がると、片仮名やローマ字になる傾向があります。
また、動植物名も片仮名が多いでしょう。動物ではウシ、ウマ、ゾウ、カバなど、植物ではサクラ、スミレ、スズラン、ヒマワリなどと英語でもないのに片仮名で書かれます。生物の学術的名称は片仮名で書くという慣習があるからです。野菜や果物もニンジンやジャガイモ、リンゴやミカンなど片仮名表記をよく見かけます。
さらに、「ツテをたどる」「アテがはずれる」「タカをくくる」の「ツテ」「アテ」「タカ」も片仮名です。漢字で書くと、「伝(つて)」「当(あ)て」「高(たか)」となりますが、漢字で書いても意味の理解には役に立たず、音から理解していることを示すために片仮名書きされやすいようです。また、本来の意味から離れた「成功のカギ(鍵)」「日本語のコツ(骨)」「笑いのツボ(壺)」なども漢字で書くのを避け、派生的な意味であることを表します。
このほかにも、外来語でもないのに片仮名書きされる語は日本語には数多く存在します。片仮名をうまく使うと見やすい文章になることは、ぜひ覚えておきたいポイントです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授