文章は「見た目」で決まるビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2020年04月09日 07時25分 公開
[石黒圭ITmedia]
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「見やすさ」のポイント(3)レイアウト

 (3)レイアウトもまた、文章の見た目にとって重要です。見やすいレイアウトの基本は箇条書きです。見やすい箇条書きは、一目で意味のわかる見出しがあり、階層構造が見える番号がつき、行頭の位置が絶妙に調整されています。よいレイアウトは、読者の視線の動線が計算され、それに応じた配置がなされています。

 紙の時代は空白を嫌い、黒い文字がびっしり埋まった新聞や辞書のような紙面が好まれましたが、ディスプレイ全盛の現代では、空白の上手な使い方がレイアウトの見やすさを決定します。レイアウトが整った文章は、テレビのニュース番組で示されるフリップボードのように、文章全体のアウトラインが一目でわかるので重宝します。

「見やすさ」のポイント(4)構成

 (4)構成は、接続詞による文のつなぎ方や、段落を単位とした文章のまとめ方が軸となります。ここでは、接続詞について簡単に紹介します。

 接続詞の難しさは、書き手によって接続詞の選び方を変えることができ、それによって文章の読みやすさが変わるという点です。次の2文は接続詞がないので、そのつながりが見えません。

 ・人は他者と完全には理解しあえない。他者と対話をすることは大事である。

 この2文のあいだに接続詞を入れると、2文の関係がわかり、理解が深まります。

 ・人は他者と完全には理解しあえない。だから、他者と対話をすることは大事である。

 ・人は他者と完全には理解しあえない。しかし、他者と対話をすることは大事である。

 「だから」を入れると、「完全には理解できないのだから、相手のことを少しでも理解できるように対話をすることは大事」という意味になり、「しかし」を入れると、「完全には理解はできないのだから、対話をする意味はないように思えるが、それでも対話をすることは大事」という意味になります。このように、接続詞を一つ入れるだけで、書き手のメッセージが明快に伝わるようになります。

「見やすさ」のポイント(5)表現

 (5)表現ですが、本書ではとくに感覚表現について詳しく扱っています。

 具体的には、「本は心のオアシス」のような比喩、「本をぱたりと閉じた」のようなオノマトペ、「一度目にした本は、手に取らずにはいられない」のような身体表現の三つを中心に扱っています。文章の「読みやすさ」は表現の論理で決まりますが、文章の「見やすさ」は表現の感覚で決まり、言葉の持つ身体性や感覚性と強く結びついているものです。

 人を説得するのには、論理だけでなく、感覚も必要です。その意味で、比喩、オノマトペ、身体表現は、感覚的な説得に役立つ表現群として、自分の文章に積極的に取り入れることをオススメします。

著者プロフィール:石黒圭(いしぐろけい)

 国立国語研究所教授・一橋大学連携教授

 一橋大学社会学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。一橋大学国際教育センター教授を経て現職。専門分野は、文章論・談話分析(日本語学)、作文教育・読解教育(日本語教育)。著書は単著のみで21冊、共編著を合わせると38冊に及ぶ(2020年3月現在)。


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