今こそ脱炭素化を機会と捉え、2050年を見据えた包括的なESGロードマップを描画する時だ。
政府は、第6回成長戦略会議(2020年12月)を踏まえ、2050年カーボンニュートラル(脱炭素化)実現に向けた実行計画「グリーン成長戦略」を発表。2030年代半ばまでに乗用車の国内新車販売をいわゆる電動車(EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、HV(ハイブリッド車)など)に限る他、洋上風力の発電能力拡大、次世代エネルギーと目される水素活用拡大など、重点14分野の実施年限や技術的課題を定めた工程表を作成した。2030年に年間90兆円、2050年に年間190兆円程度の経済効果を見込む。
世界の平均気温上昇を産業革命前に比し2.0℃より十分低く、1.5℃に抑える努力を追求する「パリ協定」(2015年12月合意)。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change(国連気候変動に関する政府間パネル))の「1.5℃特別報告書」(2018年10月)によれば、世界の平均気温は既に1.0℃上昇。従前の経済活動が続くと、早ければ2030年に1.5℃、2050年には4.0℃上昇。これを2.0℃未満に抑えるには2075年頃までの脱炭素化、1.5℃に抑えるには2050年頃までの脱炭素化が必須。政府が2050年カーボンニュートラルを目標に掲げるゆえんだ。
未来には無限の可能性がある。確実な未来予測などばかげている。ただし、予測精度ではなく戦略に焦点を当てた未来シナリオは有用だ。精度無視の誇張した未来シナリオのほうが戦略議論は活性化する。ローランド・ベルガーの2050年シナリオを基に考察しよう。2050年の未来社会を脱炭素化の観点から見通すにあたり、シナリオを左右する軸は「けん引主体」と「変革熱量」だ。
「けん引主体」とはすなわち、持続可能な社会の運転席に誰が座るのか。民か、官か。消費者の行動変容が企業の行動変容をもたらすのが「民」主体。厳格かつ詳細な規制が消費者や企業の行動変容をもたらすのが「官」主体。
「変革熱量」とはすなわち、持続可能な社会の背景にあるマインドセット。既存の仕組みを再構築し創造的破壊に立ち向かう意思があるか、環境を犠牲にした大量消費社会への未練を捨てきれずにいるか。この2軸を掛け合わせから4つの未来シナリオが導出できる。(図A1参照)
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