最終回は、組織内の全員に責任感をもたらすリーダーの習慣ついて伝える。
今回のテーマは、成果をあげる人の第8の習慣「「私は」ではなく「われわれは」を考える」だ。
ドラッカーは8つの習慣について次のように言っている。要約として紹介する。
成果をあげる人は、「なされるべきことを考える」「組織のことを考える」、この2つの習慣によって、自分が果たすべき貢献を見つける。「アクションプランをつくる」「意思決定を行う」「コミュニケーションを行う」「機会に焦点を合わせる」「会議の生産性をあげる」、この5つの習慣によって成果をあげる。
残りの1つによって組織内の全員に責任感をもたらす。組織内の全員に責任感をもたらす習慣は、リーダーが身に付けていなければならないものだ。今回は、組織内の全員に責任感をもたらすリーダーの習慣ついてお伝えする。
ドラッカーは1959年に来日し、神奈川県でセミナーを行った。その時にこんな話をした。
「ある会社で商品システムの責任者と話をしたことがあった。彼の上司は戦略部門の幹部として成長することを期待していた。上司はそれを何度も伝えた。しかし彼は、上司の言葉の重みに気が付かず、今の仕事に没頭するだけだった。やがて、彼に対する上司の期待は消えた。しまいには、会社から転職を勧められるまでに事態は悪化した。彼は自分がどんな間違いをしたか想像もつかなかったと思う。もし彼が、「なされるべきことを考える」「組織のことを考える」、という習慣を身に付けていたら、そんな結果になっていなかったはずだ。そう思うと残念でならない」
責任は常に部下ではなく上司にある。前記の事例を異なる視点から考察したい。彼の上司が組織内の全員に責任感をもたらす習慣を身に付けていれば結果は変わっていた。その商品システムの責任者は、自分の仕事から顔をあげて、自分が担うべき責任は何かを考えることができたと思う。成果をあげるために、もう一つ身に付けるべき習慣は何だろうか。
ドラッカーはこう言っている。
もう一つ身に付けるべき習慣が、「私は」とは言わずに、「われわれは」を考え、「われわれは」ということである。
ピーター・ドラッカー
「“われわれは”を考える」、それは「組織全体に立って考える」ということだ。「“われわれは”という」、それは組織全体に立った発言をするということだ。これが、やがて組織内の全員に責任感をもたらすことになる。
一人の善き習慣が組織の文化となり、やがて組織に成果をもたらす。組織の成果に責任をもつ人は、『「私は」とは言わずに、「われわれは」を考える』習慣を身に付けなければならない。組織内の全員に責任感をもたらさなければならないからだ。
私は仕事柄、いろいろなエグゼクティブに会う機会がある。どんなに立派なことを言っていても組織内から尊敬されていない人がいる。もちろん、本人はそんなことには気付いていない。部下は上司の前で不遜な態度を見せないからだ。逆に、一見、際立ったものがなく、平凡なように見えて、組織内から尊敬されている人がいる。この両者の違いはどこにあるのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
最終責任は自らにあることを知らなければならない。最終責任とは誰とも分担できず、誰にも委譲できないものである。トップが権威をもちうるのは、自らのニーズと機会ではなく、組織のニーズと機会を考えるからである。簡単なように聞こえるがそうではない。しかも厳格に守らなければならない。
ピーター・ドラッカー
役職が高ければ高いほど、自分の仕事を選ぶことができる。トップともなれば自分を叱ってくれる人は誰もいない。組織内の尊敬を受けていない上司は、自分がやりたい事をやっている。部下はそんな上司の仕事ぶりを見抜いている。
組織内の尊敬を受けている上司は、自分のことは考えない。組織に必要なことは何かを考えて、組織に尽くす。組織内の尊敬を受けていなければ、組織内の全員に責任感をもたらすことはできない。組織内の全員に責任感をもたらすためには、組織のために尽くさなければならない。
あなたが社長であれば、私はあなたにこう伝えたい。重要なことを最終的に決定するのはもちろんあなただ。しかし、どんなに自分の考えが正しいと信じていても、少しの間だけ、苛烈な説得はやめてほしい。社長のあなたに勝てる人は誰もいないからだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授