「余談だが、芥川先生は、なぜかは教えてくれなかったが、恋をしろ、恋愛をしろと言っていた。30歳を過ぎてから気付いたのは、生きるの、死ぬのという真剣な恋には、人間の全ての感情が含まれているということ。恋を経験しないと、喜びも、怒りも、嫉妬も、ただただ頭で理解するしかない。そこに気付かずに、ただ、研究所内の男女間が乱れた」(寺田氏)。
それでは、どのような本を読めばいいのか。寺田氏は、「本でも、新聞でもよいので、活字に接することが重要。いまの人は、スマホやPCでネットニュースを読んでいる。それは情報としては有効だが、知識にはなりにくい。特に新聞を読むのは有効で、全国紙ではなく、地方紙が望ましい。新聞を隅から隅まで読むこと。つまらない記事でも、つまらないという知識になる」と話す。
具体的には、どんな本がいいのか。ビジネスマンがビジネス書を読んでも得るものは多くない。自分とは、まったく関係のない本を選ぶことだ。向田邦子さんのエッセイには、ベストセラーばかりでなく、何が書いてあるか分からない本を手にとって読んでみることも、脳の活性化に必要といったことが書かれている。
「産経新聞の書評でも紹介した『人生で大事なことはみんなゴリラから教わった(家の光協会)』は、特に仕事とは関係なかったが、タイトルもいいし、分かりやすいし、ゴリラのすばらしさがよく分かるいい本だった。著者の山極壽一博士は、京都大学の学長就任時に、学長になるとゴリラの研究時間が少なくなると反対された人である」(寺田氏)
また、『フジテレビ プロデューサー血風録 楽しいだけでもテレビじゃない(幻冬舎)』も、ぜひ読んでほしい1冊だという。以前、フジテレビには、「楽しくなければテレビじゃない」というキャッチフレーズがあったが、著者の太田英昭氏は、「楽しいだけでもテレビじゃない」と書いている。笑えるだけが楽しいテレビではないのだ。この本を読むと、いかにすればテレビがもっと面白くなるかという著者の思いが伝わる。
「もっとも本を読むのは電車の中。持ち運びの難しい、大きな本は家で読むが、新幹線や飛行機での移動中は、いつもジャンルの違う5冊くらいの本を同時に読んでいる。ミステリーなどの文庫本であれば、1冊2時間程度で読み終わる。読み始めて、ある程度までは一気に読むことが重用。1冊を半年かけて、ダラダラと読んでも理解できない。いろいろな読み方があるが、スピードは大事である。大いなるスピードは、大いなる感動を与えてくれる」(寺田氏)。
詩、俳句、短歌などは、声に出して読むことで、想像力を高めることができるという。松尾芭蕉の『奥の細道』に、「一つ家に遊女も寝たり萩と月」という句があるが、これは声に出して読み、想像力を働かせなければ、本当の意味を理解できない。
「好みの書店を見つけることも大事。読みたい本が決まっていて、ネットで注文するのは構わないが、実際に書店に行って、自分の目で見て、装丁がいいとか、表紙がかわいいとか、難しそうとか、面白そうなど、1冊ずつ手に取って、購入し、読んでみる。つまらなかったでもいい。以前は、最初から最後まで読んでいたが、最近は半分程度読んでピンと来なければ読むのをやめている。それでも、時間を経て、又、読むと違った面白さに出会ったりして」(寺田氏)。
最後に寺田氏は、「新型コロナウイルス禍で外出できないいま、これをチャンスと思ってたくさんの本を読んでほしい。次回は、小説のこと、映画のこと、ドラマのこと、役者のことなど、もし聞きたい話があればリクエストしてほしい」と講演を終えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授