インフラ、データ、組織・プロセスの3つの戦略により全社一丸で進める正攻法のDX――東京海上日動システムズ 小林賢也常務ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

現在、DXにチャレンジしている東京海上グループ。ユーザー系IT企業である東京海上日動システムズでは東京海上日動火災と共に、DXを一過性の活動にしないために、インフラ構築、プロセス整備、組織の整備、および人材育成を戦略的に推進している。

» 2021年10月20日 07時04分 公開
[山下竜大ITmedia]

 アイティメディアが主催するライブ配信セミナー「ITmedia DX Summit vol.9 逆境を克服するDX 逆転突破の技術」のDay1基調講演には、東京海上日動システムズ 常務取締役の小林賢也氏が登場。「DXを実現するインフラ・組織・プロセス」をテーマに講演した。

東京海上グループでは、4〜5年前よりデジタル化を模索

東京海上日動システムズ 常務取締役 小林賢也氏

 東京海上グループは、グローバルに事業を展開する保険グループ。国内事業の中心は損害保険事業で、1996年より生命保険事業もスタート。海外事業では、北米、南米、欧州、アジアの各国でビジネスを展開している。国内代理店は約5万店、サービス拠点が240カ所、海外は45の国と地域に拠点を展開する。

 東京海上日動システムズは、1983年に設立。2004年に、東京海上システム開発、日動火災システム開発、東京海上コンピュータサービスの3社が合併し、東京海上日動システムズとして新たにスタートしている。社員数は、約1400人。東京海上グループの情報システムの企画から提案、設計、開発、保守、運用までを担っている。

 「東京海上グループでは、4〜5年前よりデジタル化の方向性を模索していました。目指したのは、お客さま志向の商品やサービスの提供、強固な顧客基盤とマーケティング力の向上、高効率で高品質なオペレーションを実現する仕組みの実現です。これらを実現するにあたり、新たなビジネスにつながるSoEやSoIと既存のビジネスを支えるSoRをタイムリーかつセキュアに連携させる必要があると考えました。また、エコシステムが広がる中、より一層スムーズな社外システムとの連携の仕組みも必要でした」(小林氏)。

 こうした課題を解決するために、東京海上グループでは、インフラ戦略、データ戦略、組織・プロセス戦略という3つの領域でDXを推進している。

DXを推進するインフラ戦略

 DXを推進するインフラ戦略としては、お客さま接点(SoE)、データ利活用(SoI)の構築はもちろん、契約管理プロセス(SoR)の進化が不可欠になる。DX推進前は、お客さま接点と契約管理プロセスが密接に結合していたため、ビジネスニーズへの対応で複雑化が進んでいた。またデータの統合、活用に関しても、データが散在していたために十分とはいえない状況だった。

DXを推進するインフラ戦略

 小林氏は、「目指したのは、お客さま接点、契約管理プロセス、データの統合、活用という3つの分野を、きちんと切り離し、その間をAPI連携により疎結合にすることで、3つの世界をシームレスに連携できるインフラの構築です。特にお客さま接点では、お客さまとの連携が増えてくることから、APIにより外部とも連携する、この姿を同時に実現することを目指しました」と話す。

 お客さま接点の領域では、お客さま向けのサービスを迅速に開発、提供するためにクラウド環境を活用。システム構築では、DevOpsを採用し、CI/CDも含めたパイプラインを構築することで、素早い展開を実現。ビジネス部門とのアジャイル開発により、パイプラインを通じたタイムリーな展開を可能にしている。

 DXの実現に欠かせない、社内データはもちろん、他社データ、外部データなどを組み合わせ、データ分析や分析に基づいたサービスの展開などを実現。クラウド環境にデータレイクを作成し、生データを蓄積。さらにデータレイクのデータを加工して、データラボ、あるいはデータマートを作成。ビジネス部門がBIツールで分析したり、データサイエンティストが分析結果をもとにサービス展開したりと利活用している。

 DXを推進するインフラ戦略としては、レガシーシステムも含めた刷新を実施。全てを最初から作るのではなく、パッケージやクラウドサービスなどを活用し、標準化を行いながら、シンプルかつ素早い展開を目指している。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆