「イノ推五輪の書をお題目にするだけでなく、いかに行動に移すかが重要なポイント。内製力の向上は、すぐには実現できません。そこで作ったのが、イノベーションハニカムです」と野村氏。10個程度のテクノロジーを決めて、そのテクノロジーが世の中でどのように使われているのかをナレッジとして蓄積し、それをデザインに生かしていく。
「IoTでデータを収集し、RPAでデータを集計して、AIで構造化するなどのデザインをうまくできるように進めています。さらに月に1回、必ずオフサイトミーティングを開催し、ここでは、自分たちがほかの企業や研究所などに出向いて、その中でもイケてる技術を教えてもらい、ほかの産業も含めて、いま起きていることを議論しています」(野村氏)
ネタがたまるとオリジナルのワークショップを使い、現場と一緒に課題を発掘したり、新しいサービスを考えたりする。こうした活動や新しい技術、事例を紹介するために社内SNSを開設し、現在約5500人が参加している。システム以外のメンバーとのつながりは発想が広がり大変価値がある。
いろいろ仕掛けると、あれも、これもと話が膨らみ、人的リソースが足りなくなる。そこで、IT部門内でDX人材の育成を行うことも必要。野村氏は、「このとき作成した育成プログラムを使い、コロナ禍で時間の空いたテクノロジーに関心を持っている整備士やグランドスタッフを教育し、実際にローコードのプログラミングをしてもらっています。内製力強化の一環として取り組んでいます」と話している。
イノベーション活動では、社内SNSと同様に、リアルのイベントにも注力。2020年はコロナ禍だったので、リアルとバーチャルのハイブリッドで約1週間のイベントを開催し、延べ1400人が参加。2021年も10月に開催予定という。
人材育成に関しては、ファーム(2軍)、および道場という2つの取り組みを推進している。2020年下期からスタートしたファームは、責任者(2軍監督)を中心に、その周りにコーチ陣を配置して、案件(入団選手)を育てる。ファームの目的は、案件をいかに1軍にあげるか。関係部に案件を取り上げてもらうのが1軍昇格で、サービスを開始するのがスタメンである。
2021年度からスタートした道場は、ロールプレイングである。実際にあった事例をベースにケースを作り、その対応を考えてもらおうという取り組みで、より良い検討をするにはステークホルダー、データ、テクノロジーなどの要素をうまく活用して、課題に対し、いかにデザインするかが大事なポイントになる。経験の浅いスタッフもDX組織には入ってくるので、OJTでは身につくのに時間のかかるナレッジを道場という形で学んでもらおうというものである。更に道場主はチームのリーダーなので、マネージャーを飛びこえたコミュニケーション機会を作るのも狙いの一つだ。
最後に野村氏は、「2017年よりDXの取り組みを開始していますが、ゴールしたわけではなく、まだまだ取り組むべきことはたくさんあります。特にコロナ禍は、会社全体としてはマイナスのインパクトですが、この時期だから強化できることはあり、むしろアクティビティーとしては増えています。デジタルテクノロジーの特性を把握し、自ら変革し機能や役割を見直すことができたいい機会だったと感じています」と講演を終えた。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授