寝る子は育つ?――リーダーこそストレス回復効果が圧倒的に高い「睡眠」を改善すべきだITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

自身の睡眠をよいものにすることに関心があるかと聞くと約9割が「関心がある」と答える。睡眠を通じてメンタルを改善することで、生産性の向上も期待できる。

» 2021年11月24日 07時05分 公開
[山下竜大ITmedia]
LIFREE ファウンダー スリープコーチ 角谷リョウ氏

 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、LIFREE ファウンダーでスリープコーチの角谷リョウ氏が登場。2012年より、ビジネスマンのパフォーマンス向上に特化した生活習慣改善コーチングを1万人以上に提供してきた実績やノウハウを生かし、「高いストレス状況でも仕事のパフォーマンスを最大限に発揮できるベスト睡眠とは」をテーマに講演した。

リーダーが睡眠を改善すべき3つの理由

 米国で、3万人を8年間追跡した研究の結果、ストレスが高い人はそうでない人に比べて死亡リスクが43%高かった。しかし、高いストレスに対して、うまく対処できたグループは最も死亡率が低かった。

 「ストレスがかかってもポジティブに対策することで、能力が発揮されたという事例です。ストレス学でも、強いストレス後に、しっかりとケアすることで、これまで以上の能力を発揮できるということが報告されています。それでは、どうすればストレスを回復して、パフォーマンスを向上させられるのでしょうか」(角谷氏)。

 映画を見る、買い物をする、お酒を飲む、ごろごろするなど、一般的な日常生活にストレス改善効果はほとんどなく、またマインドフルネスは、効果はあるが継続率は2%以下で、再現性が低いのが問題である。運動の方が、はるかに現実的で、少し強めの運動は、抗うつ薬と同じくらい回復効果があるという研究結果もある。

 運動よりハードルが低いのは食事である。例えば、緑茶を1日4杯以上飲む人は、1日1杯以下の人に比べてうつ病発症リスクが50%低いという研究結果がある。しかし、圧倒的にストレス回復効果が高いのは「睡眠」である。

 「よく寝れている人と不眠の人では、うつ病の発症率は40倍違うという研究結果があります。いきなりうつになることはほとんどなく、不眠からうつがはじまるといわれています。睡眠をきちんと取れば、疲労も取れ、食事もでき、生活リズムも整うので全て解決します。特にリーダーは、睡眠を改善すべきです」(角谷氏)。

 リーダーが睡眠を改善すべき理由は、以下の3つ。

(1)睡眠不調はパフォーマンスもメンタルも下げる。

 経済産業省の調査では、睡眠不足状態は生産性を30%低下させると報告されている。また睡眠不足状態は、事故や病気のリスクを劇的に上昇させる。

(2)無料かつ寝ているだけで効果がある。

 深い睡眠ができる人は、勉強や記憶の能力が向上する。睡眠中には、アミロイドベータと呼ばれる脳のごみが排出され、成長ホルモンが出るので、成長、回復を促進できる。食事を変えることなく適正体重に近づくことも報告されている。

(3)睡眠不調は周りの人に悪影響がある。

 睡眠が不足していると、記憶力、判断力、計画力、問題解決能力、コミュニケーション能力の全てが低下する。

 角谷氏は、「睡眠が不足していると、交流したいという相手の評価が激減し、相手が敵意を持っていると思い込みやすくなります。チームリーダーが睡眠不足だと、コミュニケーション能力が低下するという論文は数多く発表されています。これは、ぜひリーダーに覚えておいてほしいことです」と話す。LIFREEでは、『リーダーシップと睡眠』というハンドブックも提供している。

やってはいけない睡眠常識5つ

 睡眠を正確に測定するには、睡眠専門外来でのPSG(ポリソムノグラフィー)検査が必要になる。睡眠を測定する簡易デバイスを利用することもできるが、一番精度が高いデバイスでもPSG検査の60%以下の精度。スマートフォンアプリでは、40%以下になる。

簡易PSG検査で睡眠を測定中の角谷さん

 やってはいけない睡眠常識は、以下の5つ。

(1)たくさん寝ないといけない

 厚生労働省が推奨する睡眠時間は、「人それぞれ」である。角谷氏は、「昔は、8時間〜10時間寝ていたが、昔のように寝られなくなったと思うことはないでしょうか。実は、50代、60代の睡眠時間は6時間以下です」

 世界で最も寝ている国は、1位が南アフリカ、2位が中国、3位がインドだが、平均寿命の世界ランクは、南アフリカが151位、中国が53位、インドが125位である。一方、世界で最も寝ていない国は、1位が韓国、2位が日本、3位がノルウェーだが、平均寿命の世界ランクは、韓国が11位、日本が1位、ノルウェーが15位である。

 最適な睡眠は人それぞれで、年齢によっても変わるということを知るのが重要だ。

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