「話してもらえる人」になる! 心理的安全性が高まる聞く技術ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2022年11月24日 07時04分 公開
[山根洋士ITmedia]
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 など、簡単な“べからず集”を用意しておくといいでしょう。もちろん、「アドバイスがほしい」と言われたら答えればOKです。

 これは受容と共感のための、初歩の初歩ですが、かなり強く意識しないと、つい自分から口を挟んでしまいます。そしてどんどん会話の心理的安全性を下げてしまうのです。

相手との信頼関係を台無しにするNGワードとは?

 「話そうとしないこと」に加えて重要なことが、「分かろうとしないこと」です。会話の中で「分かる分かる〜」と相づちを打つ方がいますが、大抵分かっていません(笑)相手の話が分かったと思っている時は、似たような経験を自分の過去のデータベースから参照しているだけ。相手と自分は違う人間なのですから、分かるわけがないのです。

 この「分かるよ」というのは、相手に寄り添うつもりでつい言ってしまいがちなワードですが、長年の友達など親しい人が相手ならまだしも、信頼関係をつくる段階ではNG。あっという間に心のシャッターが閉ざされかねません。

 相手は心の中で「そんな簡単に分かってほしくない」「私の何が分かるのか」と思ってしまうかもしれません。その上「私も昔……」なんて自分の話を始めるのは最悪です。聞いていない、自分の話をしたがる、という印象を与えてしまいます。

 受容と共感のためには、「そうなんですね」「つらいですね」などが無難です。相手の話を分かろうとする必要はありません。相手の言っていることを、そのまま受け止めればいいのです。

話さそうとしない・分かろうとしない――本当の「共感」が心理的安全性を高めるカギ

 話そうとしない、分かろうとしない。言い換えれば、優れた聞き手とは相手の話を聞いても「自分」を挟まずに聞ける人のことです。自分の解釈も感情も一切挟まずに相手の話をフラット聞くこと。ありのまま話を聞いてもらうことで、話し手は「自分を受け入れてもらえてるんだな」と心を開いて話すことができるようになるのです。

 よく「親身になって」と使われますが、カウンセラーの視点からすると、寄り添い過ぎているイメージがあります。これは共感ではなく、相手が悲しむのと同じように自分も悲しむ、「同感」の状態です。

 本当の「共感」とは、一緒に悲しむのではなく、相手の本当の気持ちを受け止めてあげること。溺れている人のところへ自分も飛び込んで、一緒に「苦しいね」と溺れるのが同感とするなら、溺れている人に岸から手を差し伸べて、「大丈夫だよ」と伝えるのが、共感です。

 一緒に溺れてもがいてくれるのも優しさかもしれませんが、溺れている人が自力で岸へ上がるのを支える存在になることで、相手の自己解決力をも促します。

 徹底的に「聞く」姿勢をもつことは、相手の心理的ハードルをさげるだけでなく、自主性や問題解決能力も引き出すことにつながるのです。

著者プロフィール:山根洋士

心理カウンセラー、メンタルノイズ心理学協会チェアマン

両親の離婚、熱中していたスポーツの挫折、就職の失敗などを経て、情報誌編集者からノンフィクションライターとして独立。金銭的な成功をつかむものの、激務のあまり過労死寸前で緊急入院。入院生活で「なんのために生きるのか」を模索し、心理療法を学び始める。心の風邪薬のようなカウンセリングを提供したいという想いからカウンセラーになる。実践中心のカウンセリングで一線を画し、8000人以上の悩みを解決。心理学だけでなく、数多くの経営者やスポーツ選手などへの取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れたメンタルノイズメソッドを開発。ビジネス面でも、メンタルノイズ心理学を立ち上げから3年で年商1億円規模に成長させる。著書『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)がメンタル本大賞2021優秀賞を受賞。『「自己肯定感低めの人」が幸せになるワークブック』(宝島社)、『「自己肯定感低めの人」の人づきあい読本』(大和出版)、『「自己肯定感低めの人」が一生お金に困らない方法』(PHP研究所)、など著書多数。


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