スポーツとしては、ガッツポーズあり、武道としては、ガッツポーズなしにメリットが分かれるということです。
エンターテインメントとして、裾野を広げるためには、ガッツポーズありで、トップクラスのレベルを上げて、より玄人受けを目指すなら、ガッツポーズなしが効果的です。
競技者の技術習得段階においていえば、初級のころは、ガッツポーズありの方がモチベーションも上がり、上級になるに従って、ガッツポーズなしの方が、モチベーションが上がるということです。
それぞれの状況に応じた活用法があるということです。ガッツポーズにも、マナーがあるということなのです。
「改革の結果が、なかなか出ないんですけど」という相談を、受けました。
改革は、フィジカルとの戦いよりも、メンタルとの戦いです。改革中は、一時的に成績のダウンというデメリットを背負わなければならないからです。
周りからは「前の方が、良かった」と言われます。周りの人は、前の成績以上に伸ばす必然性がないからです。
もっと成長したいと思ったら、改革は必要になります。新しいメリットを手に入れるには、今あるメリットを捨てることと、新しいデメリットを引き受けなければなりません。次のフォームが定着するまでの期間の成績ダウンという大きな代償を背負わなければならないのです。
しんどいのは、「いつまでダウンをガマンすればいいのか」分からないことです。「新しいフォームなら、成績が伸びる」という確証もありません。できていることに、しばらくしてから気付く。
学校時代に漢文の授業で、「学びて時に、これを習う。また、よろこばしからずや」という言葉を習いました。
学校では、「勉強は楽しい」という表面的な解釈で、教わりました。言葉には、表面的な意味と、深いところを流れる精神があります。
「学」という字は、旧字では「學」。真ん中の××は、反復作業です。それを、両手で取り囲んで、「子」は脚で動いているようです。
「習」という字の「白」は、拍手の「白」で、羽根を羽ばたかせる。つまり、実践して、飛び立つという意味です。
原文の「学而時習之」にある「而」は、「しばらくして」という意味です。つまり、この言葉の意味はこうなります。
「教わったことを、反復して、練習しているけど、なかなかうまくならない。それでも、諦めずにしばらく続けているうちに、気が付くとできている。それが、練習することの喜びだ」という意味です。
すぐにできることは、うれしいけれど、持続しません。なかなかできないことは、焦る。だけど、なかなかできないことができた時の喜びは、なにものにもかえがたいものになります。
できた時は、「できた」と気付きません。「もう、一生、できないかもしれない」と思いながらも、続けていると、誰かが「できているね」と言ってくれる。「えっ?」と、できていることに気付く。
いつからできているかも分からない。できるようになるのは、そんな感覚です。できないことができるようになる達成感が、最大のモチベーションになります。
器用な人は、すぐできてしまうので、達成感が小さい。達成感は、できるまでにかかる時間の長さに、比例して大きくなります。不器用な人ほど、できた時の達成感が大きく、モチベーションも高くなるのです。
練習の時に、できないからと、諦めることはありません。練習中にできるようになることはないのです。できなくても、諦めずに続けていると、いつの間にか、できるようになっています。
できないことを続けることが、できるようになるコツなのです。
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。セミナー、ワークショップ、オンライン講座を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は『「生活のアスリート」になろう。』(ベースボール・マガジン社)など、1100冊を超す。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授