本屋さんでは、本を選んでいるのではなく、本に選んでもらっている。その本に目がいくのは、「ちょっとそこ行くあなた、大丈夫ですか」と、本に声をかけてもらったから。あなたは気付いていますか。
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成長するのは、本を読むリーダーです。部下に、リスペクトされるのも、本を読むリーダーです。
本屋さんでは、本を選んでいるのではなく、本に選んでもらっているのです。その本に目がいくのは、「ちょっとそこ行くあなた、大丈夫ですか」と、本に声をかけてもらったからです。
本を探そうとするのは傲慢(ごうまん)です。全ての本との出会いは、「あなたはこういう本が必要じゃないですか」「今ちょうどこの本を読むタイミングですよ」と、本が声をかけているのです。
本に面白い・面白くないはありません。全ての本に価値があります。たまたま読んだ本にピンとこなくてもいいのです。その本は、いつか役に立ちます。ただ出会いが早かっただけです。「遅かった」と考えるとせつないので、「早かった」と考えればいいのです。
全ての本は必要な時に出会うようになっています。「買っても積んでおくだけなんです」と言う人がいますが、積んでおくことにも意味があります。背表紙を見ているだけでも、そこから発する何かを感じるのです。
本には著者の思いもあるし、読み手の思いもあります。古本の中にも読んだ人の思いがあります。プレゼントされた本は、プレゼントしてくれた人の思いがこもっているのです。
本のアンケートで、本の値段が「安い」「ちょうどいい」「高い」というのは意味がありません。ピンとこなかった人は高いと感じるし、刺さったと思う人は安いと感じます。結局は、読み手がどう感じたかです。
これは「どうしたら運がよくなりますか」という質問とつながっています。本運があるとするならば、運は全ての人の目の前に来ています。「あの人は運がいい」と言われる人は、運が来た人ではありません。目の前に来ている運に気付けた人です。
「自分は運が悪い」と言っている人は、目の前にせっかく運が来ているのに、その運に気づ付かなかった人です。
本屋さんには、本がたくさん集まっています。そのたくさんの本が、あなたに声をかけてくれています。それにどれだけ気付けるかです。
僕の小学校の読書感想文のように、本は読むたびにどんどん面白いところを発見できます。前とは違うところに線を引けて、違う言葉が心に刺さるのです。
空海は、「世界で一番大きいものは何か」という問いに、「それは言葉だ」と答えました。宇宙がどんなに大きくても、「宇宙」という言葉で表現した瞬間、宇宙を捉えることができるのです。
本には言葉の力があります。本を読み直して、2回目に面白いものを発見しても、本屋さんから追加請求は来ません。
本は気付いた人の気付きほうだいです。気付いた量が多いからといって、追加料金は発生しません。元祖サブスクです。
自分が元気づけられた本の言葉を誰かを元気づけるために使っても、著作権に引っ掛かるという話は生まれてこないのです。本には特許がありません。読んだら読んだ人のものになります。そこにその人の人生が加わって、それをまた人に話します。その時点で、すでにその人のものになっているのです。
僕は大学時代、食費と服代を節約して、そんなにアルバイトもせず、親のすねで本を買っていました。社会人になってからも、本代にお金を注ぎ込んでいます。
今、僕は本を書いて稼いでいるという意識はありません。本からもらった勇気とか希望を本にお返ししているだけです。全ての本は、著者が言いたいことを書いているのではありません。その本で幸せになったり、希望や夢をもらったりしたら、本で次のリレーの走者にお返ししていきます。そういうものが集まっているのが、本屋さんなのです。
シアトルに講演に行った時に、講演の主催者に案内してもらって、地元の本屋さんを見学しました。シアトルはコーヒーで有名です。その本屋さんは、コーヒー店と本屋さんが合体して、コーヒーを飲みながら、立ち読みならぬ座り読みができて、何か食べながら読んでもいいのです。
「これはオシャレだな。いつか日本にもこんな時代が来るんだろうか」と思っていたら、そんな時代が今、現実に日本にもやってきました。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授