若手人材の早期離職を解決! 部下を活かすマネジメント“新作法”とはビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

現状を聞き分析する中で分かったのは、企業側が若者の真の離職理由を捉えきれていないこと。いったい何が食い違っているのだろう。なぜ若者はすぐに辞めてしまうのだろうか。

» 2023年09月28日 07時01分 公開
[前川孝雄ITmedia]

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厳選採用が不可能な「超売り手市場」時代に突入

『部下を活かすマネジメント“新作法”』(Amazon)

 最近、私の会社に、企業経営者や人事担当者から若手社員の早期離職を食い止めたいという相談が急増しています。コロナ禍の収束と経済の正常化に向けた採用熱も、拍車をかけています。特に、今まで就職人気業界・企業であったところほど顕著です。

 これまで、伝統的な日本企業は、新卒一括採用で若者をふるいにかけて厳選し、OJT中心の企業内人材育成によって長期的に育ててきました。90年代はじめのバブル崩壊以降、買い手市場である就職氷河期が20年以上続いたため、この厳選採用がやりやすかったといえるでしょう。

 ところが、近年はそもそもの募集人数に対して十分な応募が集まらなくなっています。若年労働人口の減少、技能伝承の必然、景気回復という3つの条件が重なってきたからです。DX、AIなどの台頭で、新時代に向けた知識・スキルが求められるようになってきたことも大きいです。企業は、既に若者をふるいにかけること自体が困難な売り手市場に潮目が変わったことを、まず認識すべきでしょう。この数年は、コロナ禍という特殊な状況で採用を手控えた企業もありました。しかし、少子化の影響で、大学を卒業して企業で働き始める22歳の新卒人口が2022年から減少傾向に転じる「2022年問題」とも相まって、中長期的には売り手市場傾向は続くでしょう。

 こうした中、やっとの思いで採用した若手社員が早期離職してしまっては、目も当てられません。ただ若手社員のほうも早期離職する前提で入社する人は少ないはずです。現状を聞き分析する中で分かったのは、企業側が若者の真の離職理由を捉えきれていないこと。いったい何が食い違っているのでしょう。なぜ若者はすぐに辞めてしまうのでしょうか。

《マネジメントの非常識》時代遅れの「石の上にも三年」

 若手社員の離職を招く要因は、リアリティショックです。就職先の職場や仕事が想像とは大きく異なると感じること。理想と現実のギャップです。ただし、いつの時代にも新社会人にリアリティショックはあるものです。長年働いてきた管理職や経営層自身も、多かれ少なかれ経験してきたのではないでしょうか。「石の上にも三年」ということわざがあるように、数々のギャップに耐え、試練を我慢し、自力で乗り越えるのが当然だと考える人も多いはずです。

 けれども、この「我慢して頑張るべき」という考え方が、もはや時代遅れだと私は感じています。40代後半以上の管理職や経営層が就職した頃は、まだ終身雇用が暗黙裡に約束されていました。若い頃に我慢して働けば次第に昇進・昇給する年功序列であり、定年まで勤め上げれば、退職金と年金で老後の暮らしも見通せたはずでした。特に大企業なら、就職できれば一生安泰と考えていた人も多いことでしょう。つまり、「石の上にも三年」は、将来が保障されるという暗黙の前提があったから通用したのです。

 しかし、今の若者は、終身雇用はおろか年功制の給与体系も崩壊しつつある現代に働き始めています。大手企業で中高年層のリストラが頻発し、親世代が苦労する姿を間近に見て育ってきたため、企業の安定性を信じられなくなってきています。その結果、優秀な若者ほど「寄らば大樹の陰」では将来が保障されないことを自覚しています。会社がどうなっても食べていける市場価値のある人材に、早く成長したいと考えているのです。「就社」ではなく、「就職」に意識が変わってきたともいえます。そのため、「石の上に三年」も我慢する意味が分からなければ、若者はすぐに辞めてしまうのです。

 では、若者の早期離職を防ぎ職場定着を図るには、どう対処すべきでしょうか。

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