「いざとなれば介護施設に入所すればいい」が間違いな理由老老介護で知っておきたいこと(1/2 ページ)

「いざとなれば、どこかに入居すれば大丈夫」という考えは幻想のようなものだと、あえて警鐘を鳴らす。

» 2024年01月31日 07時06分 公開
[坪田康佑ITmedia]
『老老介護で知っておきたいことのすべて 幸せな介護の入門書』

 「いざとなったときは、施設に入ればお世話をしてくれるでしょう」

 介護についてあまりよく考えていない人の中には、そのような人が多いように感じています。また、私が訪問看護を担っていたときにも、自宅で暮らす利用者さんからそうした言葉をよく耳にしました。

 しかし、「いざとなれば、どこかに入居すれば大丈夫」という考えは幻想のようなものだと、私はあえて警鐘を鳴らしておきます。

 その理由を説明するうえで、まずは介護施設の種類について説明しましょう。介護施設と一口に言っても、公的施設から民間施設までさまざまな種類があり、種類によってサービスの内容や入居の条件、目的、費用などに違いがあります。

 同じ公的施設の中でも、介護老人福祉施設、いわゆる特別養護老人ホーム(特養)は、常時介護を必要とする要介護3以上の人を入居対象とし、介護老人保健施設は、主に在宅介護への復帰をめざす人を対象としているのでリハビリが充実しています。

 また、人気のサ高住、いわゆる初期費用が比較的抑えられる「サービス付き高齢者向け住宅」は、「住宅」の扱いであり、自宅で暮らすような自由度やプライバシーが重視される一方で、生活援助などの介護サービスは限定的です。

 こうした違いを把握できていない状況で、すすめられるままに入所先を決めてしまうと、「いざ入所したらイメージと違った」「もっと生活援助を受けたかった」といった事態にもなりかねません。

 決してどこかに入所できれば安心と安易に考えないでください。

 入居する本人の要介護度や状態、費用などをふまえ、本人に適した施設の見極めは、長い時間を要するとても大事なことと心してください。

そんな簡単には希望の施設には入れない

 お金の現実とも向き合う必要があります。施設に入居する場合、ケアハウスを除く公的施設には入居一時金がかかりませんが、民間施設の介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームにはまとまった入居一時金が必要となります。

 さらに、公民いずれの施設においても、入居後は利用料を月々支払う必要があります。公的施設は入居一時金がかからず、民間施設に比べて月額利用料も割安な場合が多いと聞かされると、「ならば、いずれは公的施設に入所しよう」と考える人が多いのではないでしょうか。

 残念ながら現実はそう甘くはありません。公的施設の中でも人気の高い特別養護老人ホームは、申し込んでも「入所待ち」になることが多いのが現状です。

 厚生労働省の「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」に関する調査結果を見ると、「特別養護老人ホームに入所を申し込んでいるものの、調査時点で入所していない人(要介護3以上)」は、全国で25万3000人にのぼっています。

 この数字からも、希望しても簡単に入所できないことが分かります。

 じゃあ、お金を払って民間の施設に行くしかないと考える人もいるかもしれませんが、評判の施設は、満室で入れない場合も少なくないのです。

 今後のことを考える余裕なんてない、まだ先のことは考えたくない、という言い分も十分に理解できます。

 しかし、被介護者が過ごすことになる施設は文字通り、終の棲家になる場所です。入所についてもできるだけ早く検討をはじめたいものです。もちろん、自分だけですべてを抱え込む必要はありません。少しずつで構いませんから、いざというときのために、周りの実際に利用している人たちに話を聞きながら、情報を集め、検討を進めていきましょう。

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