広報の目的は、企業や組織の情報を正しくステークホルダーに伝える事です。自社の製品、サービスの認知を高めると同時に、会社そのものの社会における価値を知ってもらうために、広報PRは大きな役割を果たします。
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皆さんの会社では、次のようなことが起きていないでしょうか。
これらの大半は、突き詰めると「経営者が広報マインドを持っていない」ことに原因があるでしょう。広報は組織の一部です。その頂点に立つのが経営トップです。
広報の目的は、企業や組織の情報を正しくステークホルダー(企業に対して利害関係を持つ人)に伝える事です。自社の製品・サービスの認知を高めると同時に、会社そのものの社会における価値を知ってもらうために、広報PRは大きな役割を果たします。
このことに対して「広告で十分じゃないか」と感じる人もいるかもしれません。広告を打てば、確かに製品やサービスは認知されるかもしれません。ただ、「会社そのものの社会における価値」は伝わるでしょうか。ここに広告と広報の大きな違いがあります。
会社がどのような考えに立って事業を進めているか、またサービスを開発しているか。理念やビジョンを踏まえて、ときどきの会社の動きを伝えることが広報の本質であり、それによって、消費者に共感が生まれます。その共感があってこそ、サービスへの関心も高まります。その意味で、広報PRは企業価値を高めることにつながるのです。
ここで、広報に力を入れていない企業の経営者に伝えておきます。
広報活動の成果の1つはメディアで記事になることですが、報道された企業情報は、読者・視聴者に絶大な信頼感をもたらします。それは、企業が発信する情報そのものではなく、プロの記者が書くことによって客観性が生まれるからです。その他に、以下の経営インパクトが生まれる、というのが私の経験から実感するところです。
広報によってもたらされるメリットは多様で、企業が社会的に認知され、信頼度が高まり、そこから商品・サービスの販売促進にもつながっていきます。
企業が効果的に広報機能を発揮するためには、経営トップの理解が不可欠です。ただ、これが案外、難関です。
そもそも社長がメディアを嫌う。広告と広報の違いが分からず、編集記事も広告同様に、好きにコントロールができると信じて広報している。このような思考回路のトップの下にいる広報は、記者と良好なコミュニケーションもとれません。
企業情報を正しくメディアに向けて発信していく一番の広報パーソンは、実は社長です。企業取材においてメディア=記者が最も重要視する対象は、間違いなく社長です。そのため、社長と記者との良好なコミュニケーションが必要で、特にインタビュー取材が重要な場となります。
メディアは新聞、雑誌、テレビ、WEBメディアなど多様ですが、それぞれの属性よって求める情報や関心テーマも違ってきます。社長が広報マインドを持っているかどうかで、その企業の日々の発信情報の量・質は違ってきます。
メディア関係者からよく聞くのは、「ビール会社の経営トップは広報マインドがある」ということです。私もビール会社の広報を担当したときに、そのことを強く感じました。広報スタッフ含め、トップが記者と接する時の対応の素晴らしさ。会社にとってネガティブな質問にも丁寧に答える姿勢。自社のPRというより、ビール業界全体を正しくウオッチしてほしいという姿勢も強く感じられました。
このような会社の報道は、消費者にも良い印象を与え、ファンになってもらうことにもつながります。経営トップになるまでの重要なポストとして、広報セクションを経験した社長も少なくありません。
大手飲食業のトップの取材立会で、広報に対する考えについて質問があった時に「全社員、社長も広報スタッフの一員です」「私はどのような時にも取材をお受けします」と答えたコメントを思いだします。
よく企業の広報パーソンに、広報のKPIやメルクマール設定について尋ねられます。分かりやすい基準で言えば、毎年の報道数の比較や広告換算が一般的です。しかし広告換算の数値は、目安にすぎません。極論を言えば、広告と広報を混同したナンセンスな数値と言えます。
では、広報は何を意識すればいいのでしょうか。それは「記者の満足度」だと思います。企業活動では、営業やカスタマーサービスにおいては顧客満足度が目安となりますが、私は広報の世界でも同じ考えだと確信しています。企業情報は広報を通じて記者に伝えます。広報セクションの顧客はだれなのか。それは、メディア=記者です。
ここで間違ってほしくないのは、記者が顧客だからといって、変に迎合したり、おもねる必要はない、ということです。広報と記者は、あくまでも立場は対等です。記者と良好な関係を築く目的は、自社の情報に関心を持ってもらい、正確な記事を発信することで満足度を高めてもらうことです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授