上場の東京メトロ社長、都営地下鉄との一元化「テーマではない」 過去には“バカの壁”も

東京地下鉄が23日、東証プライム市場に上場し、1株1739円で午後の取引を終えた。

» 2024年10月24日 08時54分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 東京地下鉄(東京メトロ)が23日、東証プライム市場に上場し、1株1739円で取引を終えた。都内には東京メトロのほかに、もうひとつの地下鉄「都営地下鉄」がある。これまで、両社の経営統合はたびたび俎上に挙がっており、上場によって、東京メトロのサービス向上に期待する利用者にとっては、都営地下鉄との連携の行方も注目される。

上場通知書を手に記念撮影に臨む東京メトロの山村明義社長(中央左)ら=23日午後、東京都中央区の東京証券取引所(酒井真大撮影)

 東京メトロでは現在、都営地下鉄と乗り継いだ場合、70円の乗り継ぎ割引が適用され、JRとの最大20円、私鉄線との最大30円より大きい。また、共通の一日乗車券の販売やシステムの共通化など、サービスの連携が進んでいる。

 ただ、運賃体系を同一にする「運賃通算制」の導入などには至っていない。東京メトロの山村明義社長は23日の記者会見で「(都営地下鉄との)一元化はテーマになっていないと考えている。当社は当社で経営改革を進めていく」と統合を否定した。

 東京メトロは、東洋初の地下鉄路線(現在の銀座線)を運営していた東京地下鉄道と東京高速鉄道を源流とする。1930年代の世界恐慌で民間企業の経営が悪化する中、戦時体制下の41年に両社の路線を引き継ぐ形で国や東京市(当時)が出資する帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が設立された。

 戦後は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による廃止も免れ、2004年に東京メトロとして再スタートした。

政府有識者会議が「並存」提言

 一方、都営地下鉄は文字通り、都交通局が運営する。都交通局は都営バス、東京さくらトラム(都電荒川線)、日暮里・舎人ライナーも運営している。

 都交通局はバスや路面電車を運営し、営団地下鉄とは住みわけがされていたが、人口増加で都市交通の整備が急務となる中、1957年に地下鉄建設参入が認められた。60年に初の都営地下鉄として浅草線が開業した。都営地下鉄の設立にあたって、政府の有識者会議が複数事業者による地下鉄整備を提言し、2つの事業者が共存する体制が定着した。

 ただ、都は地下鉄の一元化にたびたび意欲をみせてきた。戦前の営団地下鉄設立の議論では、東京市(当時)が市営を主張していた。戦後の民営化の過程でも1985年に当時の鈴木俊一都知事が営団地下鉄の国鉄分の出資を都が引き受ける方針を示した。

 2006年には当時の石原慎太郎都知事が再び一元化構想を打ち上げた。猪瀬直樹副知事(当時)が10年に統合案を提起したが、この時は両社の財務状況の差やシステム統合の技術的な課題などもあり、統合は見送られた。

 経営統合は保留となり、乗り継ぎ利便性の向上や割引の拡大といったサービス改善を優先されることに。九段下駅で、構造上は1つのホームでありながら、都営地下鉄と東京メトロで分断していた壁が「バカの壁」と呼ばれており、13年に撤去され、話題となった。

 山村社長は「使用している券売機のスペックは同じ。案内サインも共通化している。お互いのホームを行き来するエスカレーター、エレベーターの整備など、サービスの一体化は進めていく」と話した。(高木克聡)

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