新規事業を行う際、抽象的なミッションは共有できていても、細部のイメージがメンバーで共有できていないという場合もある。「観光業にイノベーションを起こす」というミッションがあっても、「観光業」とは何か、「イノベーション」とは何か、というワードの定義がなされていなければ、チームがまったく違う方向に進んでしまう可能性がある。事業を進めるうえでは、言語化、定義化が必要なのだ。そのためにも、適切な相手に相談して壁打ちを行い、事業の要素を分解して、細部の解像度を高めていくことが重要なのだ。
「現代の消費者や働き手の価値観は、機能的価値から情緒的価値へとシフトしています。これまでは機能がよければそれがアピールポイントになっていましたが、今はワクワク感や共感できるストーリーといった情緒的価値がなければ消費者は動きません。だからこそ、事業を進める際には、何のためにやるのか(目的)、誰のためにやるのか(顧客)、どんなサービスを作るのか(商品・サービス設計)、しっかり解像度を高めなければ、これまでのようなマーケティング戦略では若い世代にはまったく届かなくなってしまいます。相談を繰り返して仮説検証を行っていくと、社会トレンドの変化にも敏感に気づけるようになるので、感度を高めていくことが大事です」(山中氏)
相談して仮説検証を繰り返すには、どうしても時間がかかる。一見、ノロノロとしており、事業が進んでいないように見えることもある。しかし、仮説検証を繰り返して少しずつでも前に進み、解像度をあげていくことで、事業の目的、顧客像、サービス内容、マーケティング戦略などのストーリーが見えてきて、ブレークスルーの瞬間が訪れる。このストーリーが見えたら、資金やリソースを投下し、ビジネスを一気に前進させる時だと言える。
しかし、時代は常に変化している。どんなに仮説検証を行っても、それが思い込みという場合もある。そんな時に備えて、計画には常に余白を持っていなければならない。絶対的な計画というものはなく、計画はアップデートを重ねて変化していかなければならないのだ。
「アクションを続けていれば、1年も立てば必ず状況は変化しているはずです。行動量が多く、状況の変化を見通して常にアップデートしている人は、どんどん言うことが変わって朝令暮改と言われることもありますが、これはポジティブに捉えるべきです。計画に余白を持ち、状況に応じて計画を変える柔軟性も必要です」(山中氏)
適切なフェーズで適切な相手に相談を行うことで、ネクストアクションが見えてきて、事業の解像度が高まっていく。そして事業のストーリーが固まり、ブレークスルーが訪れる。山中氏は「事業をノロノロ運転からブレイクスルーさせる秘訣」について、相談スキルの重要性とその可能性について振り返り、講演を終えた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授