「皆さん、完璧なリーダーを演じるのは、もうやめませんか?」──加藤氏はこう投げかける。そして、多くのリーダーが「弱みを見せてはいけない」「常に答えを持っていなければならない」というプレッシャーを感じている現状に対し、根本的な転換を提案した。
シェアリングリーダーには、従来とは全く異なる5つの行動様式があるという。
高みの見物で指示するのではなく、自ら実践し、背中で見せる。「やってみろ」ではなく「一緒にやろう」と言えるリーダーだ。
マイクロマネジメントではなく、信じて任せ切る。人は信じられたら、その信頼に応えようとするものだ。
鎧を脱ぎ、弱みや苦手なことを自己開示する。できるリーダーが見せる弱みは、むしろチャーミングであり、周囲の助けを引き出す効果がある。
「違い」は「間違い」ではない。多様な価値観を尊重し、理念という共通の接着剤でチームを束ねる。
「失敗したね、でもこれでまた成長できるね」と、挑戦そのものを称賛し、成長の機会として捉える。
こうしたリーダーがいる組織では、メンバーは安心して挑戦できる。3年先、5年先の先輩が、不平不満を言うのではなく、生き生きと仕事に取り組んでいれば、「あの人のようになりたい」という目標が生まれ、困難な仕事にも前向きに取り組める。逆に、ロールモデル不在の組織からは、未来を描けずに人が去っていくのだ。
加藤氏の提言は、AI時代におけるリーダーの役割を鮮やかに浮き彫りにした。
「これからは情報共有から感情共有の時代、インフォメーションからパッション、エモーションの時代に変わります」(加藤氏)
確かに、タスク管理や情報整理といった「氷山モデル」の目に見える部分は、今後ますますAIに代替されていくだろう。しかし、AIには決してできないことがある──それは人の心を動かすことだ。
「自分の情熱をどう届けるか。自分のために頑張ったことが、会社のためになり、巡り巡って世のため人のためになる。その“ための一致”を実感できる組織を作ることが、人心を掌握し、人を巻き込んでいく本質です」(加藤氏)
この講演で示された「氷山モデル」や「組織の成功循環モデル」は、単なる理論ではない。加藤氏が支援した企業では、離職率が3分の1に激減し、4年目以降はゼロになった例や、過去最高益を更新した企業が続出したという実績が、その有効性を物語っている。
なぜこれほどまでの成果が生まれるのか。その答えは、人間の本質的な感情やモチベーションの源泉に働きかけているからだ。業種や業態、企業の規模を問わず有効であると加藤氏は確信している。
質疑応答では、「急に態度を変えると周囲から浮いてしまうのではないか」という懸念の声が上がった。これに対し加藤氏は、「『セミナーで聞いてきたから試してみる』と言えばいいんです」と笑いながら答え、変化への第一歩を踏み出すハードルを下げた。
まず自身の弱みを自己開示することから始める。完璧なリーダーを演じる必要はない。むしろ、不完全さを認め、仲間を頼るリーダーのもとにこそ、人の力は結集する。
IT部門のリーダーたちは、日々の業務に追われる中で、つい目に見えるタスクや進捗管理に終始しがちだ。しかし、真の変革と持続的な成果を生み出すためには、一度立ち止まり、自らのチームの「関係の質」や、共有すべき「理念」について深く考える必要がある。
複雑で予測不可能な時代を乗り越えるための、最も人間的な、そして最も強力なリーダーシップの実践が、いま求められている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授