岩佐氏は、現場のセキュリティ担当者に対して深いリスペクトを持っている。特にミスが許されない仕事を、簡単かのようにやってのける能力に心服する。
「私は学生時代、サッカー部でキーパーをやっていましたが、キーパーが正面のボールを防ぐ確率は98%なんですよ。100%にはならないんです。しかし、100回のうち98回を防いでも褒められず、たった2回のミスに激しく失望されます。一方でスーパーセーブをすると周りが沸くわけですが、その中には正しいポジションをとっていれば正面で止められるものもあります。本来は優れたポジショニングこそ評価されるべきですが、なかなか分かってもらえません。セキュリティ担当者も同じような立場だと思っています。入念な事前準備は褒められず、何かあったら叱られてしまいます」
そんな厳しい職業にも関わらず、信念を持って企業を守るセキュリティ担当者を岩佐氏は「勇者」に例える。時には社内で厳しいことも言い、忌み嫌われることもありながらも、世界を救うために巨悪と戦う姿は、とあるRPGゲームの勇者そのものだ。
そして、その勇者に寄り添うセキュリティベンダーだが、決してパーティの仲間ではなく、街角で最適な装備を提供する「武器屋」だと定義する。
「どんなに優れた武器でも、レベル1の勇者に伝説の剣を渡しても使いこなせません。装備もできない、オーバースペックなツールを売りつけるようなことは絶対にしたくない。今、その企業が置かれているクラウド環境や運用体制のレベルを見極め、『今のあなたにはこの武器が最適ですよ』と正直に提案できる存在でありたいんです」
実際、同社では製品を売って終わりではなく、導入先の企業内でセキュリティ文化を根付かせるための伴走支援に力を入れている。担当者が社内の事業部門を巻き込みやすいようなドキュメントの提供や、定例会を通じた運用サポートなども行う。担当者からは「製品の機能以上に、応援して伴走してくれることが本当にありがたい」と言われることもしばしばだ。
岩佐氏の視線の先にあるのは、自社の利益やセキュリティ業界の発展だけではない。その根底には、創業時から変わらぬ「日本企業が世界を変える時代をつくる」という強い使命感がある。
「変化の激しいこの30年において、日本のものづくり企業にはまだまだ計り知れないポテンシャルがあります。ただ、クラウドやAIといった新しいテクノロジーを活用する上で、セキュリティへの不安が足かせになっている。私たちがその不安を取り除き、守りを固めることで、日本企業はもっと能動的に、攻めのテクノロジー活用ができるはずです」
実際、導入先の企業では、セキュリティが担保されたことで、これまでクラウドを敬遠していた部門がクラウド上にデータ分析基盤を構築し、新たな事業創出に乗り出すといった好循環が生まれているという。
「今際の際に、『Cloudbaseがあったから、日本の大企業からこんなに素晴らしいサービスや製品がたくさん生まれたよね』と思えたら、これ以上の幸せはありません。まだまだ道の途中ですが、日本にとってなくてはならない、ある種『武器屋』としての矜持を持って、日々皆様とともに歩んでいきます」
かつてゲームのレアアイテムを追い求めた少年は今、日本の産業界という世界で、テクノロジーという魔法を使い、企業の未来を切り拓くための最強の武器を創り続けている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授