市場のあらゆる製品・サービスでコモディティ化が進んでいる――企業間の技術力の差が縮まってきていることが背景にある、と早稲田大学の恩藏教授は言う。価格競争に陥らざるを得ない“コモディティヘル”を乗り越える方策はあるのか?
製品・サービスのコモディティ化が進んでいる。企業同士の技術力の差は小さくなってきており、消費者はもはや市場に流通する商品に明確な差を見いだせなくなってきている。このコモディティ化は、あらゆる市場で価格競争を引き起こし、利益の出せない“コモディティヘル”へと導きつつある。
11月15日、早稲田大学でエグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム「第18回 インタラクティブ・ミーティング」が開かれた。マーケティング理論などに詳しい早稲田大学大学院商学研究科の恩藏直人教授が、コモディティヘルを乗り切るためのマーケティング戦略について話した。
コモディティ化とは、商品に本質的な違いを見いだせなくなることをいう。例えば、小麦や大豆などがコモディティと呼ばれているが、それは生産地に違いが見られる程度で、本質的にはまったく差が見られないからだ。また、「ペットボトルの緑茶のようなものもブランドは異なっているが、コップについでしまえば、それがどこの商品か分からない。そのような商品は、みなコモディティと言える」(恩藏氏)。
このような現象は、一般消費財だけでなく、サービスやB2B向け製品でも見られるようになっている。確かに、宅配のようなサービスの世界も既に、時間帯指定、翌日配送といったのは当たり前、違いは運んでくれる人ぐらいにしかない。
「この10年、コモディティ化はますます進んでいる。競争の軸が限られてきており、差別化が難しい。その結果、価格競争にならざるを得ない」――このような地獄のような状況が“コモディティヘル”(日用品化の地獄)と言われる。GE会長のジェフ・イメルト氏の言葉だ。
恩藏氏によると、コモディティ化を裏付けるデータが幾つか見られている。年々高まっている企業の販売促進費比率の上昇は、その傾向の1つだという。同氏が示した上場食品企業の販売促進費のデータは、1993年と比較して2005年では27%ほど上昇している。「この販売促進費は、かなりの部分が値引きの源資になっている」。
また、市場シェアの上位変動が起こりやすくなっているのもコモディティ化を裏付けている。「かつては技術の差で不動の地位を築けたが、イノベーションが減り、企業努力などでシェアが変わるようになった」というわけだ。
技術力の差でライバルを振り切れなくなった今、競争力の武器は(1)顧客価値、(3)リーン消費、(3)利益モデル――の3つに隠されていると恩藏氏は話す。これら対応をうまく行い、顧客にライバル以上の価値を実感してもらう必要があるという。
(1)の顧客価値対応は、顧客に対し商品価値をどこに置くかのポジショニング戦略といえる。画期的な新製品などで独自価値を築けるのが最善だが、それはなかなか難しい。そこで、改良や工夫による品質について、顧客に価値を見いだしてもらう方法がある。また、品質が優れていることを訴求するのではなく、顧客への見せ方や情報発信で、先行商品のサブカテゴリーと認知させる戦略もある。
どちらが有利かといえば、「一般的には、経験価値よりはカテゴリー価値の方がパワフルだとされている」と言う。
これら差も生みだせないコモディティ化の激しい市場では、商品の物語や歴史などを訴えるやり方で価値を生みだす戦略がとられる。経験(エクスペリエンス)というのは最近のマーケティングの流行だ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授