物事にこだわりを持つのは日本人の長所だが、時にそれがビジネスの足かせとなってしまうのも事実だ。企業のJ-SOX法対応でもその影響がみられる。
経営層に向けたセミナー「第5回 ITmedia エグゼクティブ セミナー」が6月27日に開催された。パネルディスカッションでは、IT調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)の内山悟志代表取締役をモデレータに、After J-SOX研究会の中心メンバーが企業における日本版SOX法(J-SOX法)対応の実態と今後の課題について議論した。
「多くの企業は五里霧中でスタートしてしまった」。同研究会で座長を務める立命館大学大学院の田尾啓一氏はこう述べる。2008年4月から適用年度が始まったJ-SOX法はなじみのない制度であるため、企業の多くがスキル不足、リソース不足などに頭を悩ませているという。また実施基準や金融庁の例示が中途半端であるほか、業種・業界、監査法人、会計士それぞれで解釈が異なっていることも混乱を招いている。
そうした中での企業の取り組み状況はどうか。同研究会運営委員でNECのマーケティング本部長代理である川井俊弥氏は、上場企業159社のIT部門を対象に実施した調査の結果を発表した。調査によると、8割以上の企業が「構築」や「運用・評価」といった文書化以降のフェーズにある一方で、中堅・中小企業では取り組みの遅れが目立つ。
同じく運営委員を務めるアビームコンサルティング プリンシパルの永井孝一郎氏は自社で実施した別の調査データを提示する。これによると、回答企業のうち52%が外部監査人による予備調査または文書レビューを実施していないという。永井氏は「これではぶっつけ本番になってしまう」と懸念する。
企業にとっても、どの程度までJ-SOX法に対応していけばいいのか判断基準がないことが問題だ。田尾氏は「日本人は徹底的かつ合理的に考える習慣がある。例えば文書化についても細かくやり過ぎて、必要以上に手間が掛かっている感がある」と指摘する。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授