基幹システムからデータを引き出して、自由に分析を加えるということは多くの企業が取り組んでいることだ。しかし、実際にはその作業には手間や時間が必要以上にかかっていることが多い。
導入前の課題
導入後の効果
日産化学工業は1887年に日本初の化学肥料製造会社として創業した総合化学会社である。農業化学製品や医薬品事業のほかに、最近では液晶ディスプレイや半導体の製造に関連する電子用材料分野でも高いシェアを誇る製品を販売している。
同社は、2002年にSAP R/3を活用して基幹システムを再構築した。システム部主席の玉島良則氏は当時のことを次のように語る。
「基幹システムの再構築にあたり、各業務部門から多くのメンバーが集められこのプロジェクトを進めていきました。私もその中の1人で、販売部門の担当として参加しました。データ移行やユーザーインタフェースの面でなかなか大変でしたが、システム部門と業務部門の連携はとてもうまくいったと思います。プロジェクトは2000年から進められましたが、その段階から、基幹システムに集約されるデータを分析するためのツールをどうするかという問題は大切な問題でした」
そこでSAP R/3の導入と同時にDWHモジュール「SAP BW」(以下BW)を採用し、さまざまなデータを見える化する仕組みを用意した。
「データの分析はどんな業種の会社でも重要な業務ですが、当社のような化学製品メーカーでは、原材料価格や工場での製造状況、販売実績や在庫状況などをできるだけ正確に迅速に把握しておく必要があります。機械製品などとは違って、化学薬品は生産調整などのために工場の稼働をすぐに停止したり、再開することができないのです。製造ロスについても厳密に管理する必要があります。そういう意味で、データの分析は日常業務の中でも重要な仕事の1つなのです」(玉島氏)
基幹システムからの情報を集約してデータ分析することは、経営層だけに向けられた業務ではない。ただ、そこに問題が発生していた。BWは末端の営業担当者などが活用するには運用面で使い勝手の悪いものになっていた。各担当者は自分の売上数字や所属する営業所のデータが欲しい。また、彼らを統括するマネジャーも自分の担当する地域や製品を中心に細かな分析をしたいという要求がある。
しかしBWを使ってそうした作業を試みようとすると、ドリルダウンの階層が非常に多く、使い勝手が悪い。だからこそ、自社開発のBIシステムを開発したのだった。このシステムについて玉島氏は次のように話す。
「このシステムはNwebという名前のもので、Web上でExcelが使えるというイメージで考えてもらえば分かりやすいと思います。ここにデータを入れて、Excelの表を作るというものです。オーラップツールを使うよりは使い勝手がいいものとして、関連会社も含めてこのシステムを使っていってもらうよう、お願いをするようにしました」
ところが、このシステムもデータ量が増加するにつれて、パフォーマンスの低下が目立つようになってきた。キューブからデータを取り出そうとすると、システムがダウンしてしまうことも発生するようになったという。各担当者が何度もNwebを利用することに耐えうるよう、各担当者が自分の売上明細を早く検索できるよう改良すべく、方策が考えられていた。というのは、BWのバージョンアップのコストと開発移行期間を考慮すると、やはりデータ分析は別のシステムやツールを活用することが最優先ということになっていたからだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授