ITの省エネは、日本固有の問題ではない。世界中が情報化の時代になっているのだから、世界に共通の問題である。特に昨今は、先進国のみならず、高度成長を続けているBRICs、天然資源の高騰によって経済が活況を呈し始めている国々などで、インターネットがこれから急速に普及していくこは間違いない。すでに相当程度インターネットが普及している日本や欧米等の増加率を遙かに上回る伸び率で世界全体の情報量が増大し、それに伴って、当然、ITの電力消費量も増大することは直感的にも明らかだ。実際に試算してみると、世界全体では2025年までにITの電力消費量は10倍近くになると試算している。
いずれにしても今、早急に世界全体で取り組まないといけないのがITの電力消費量の削減である。確かに、これまでは地球環境を守るためにと言っても、あまり身近に感じられない時代だった。現に、地球温暖化問題にしても本格的に議論されるようになったのはわずか20年前からだ。しかし、今や状況はまったく違ってきているのである。
ITの消費電力増大への懸念に関して、最近特に問題視されているのがデータセンターである。インターネット時代には、データセンターが不可欠だ。そして、各社がITを活用してビジネスを拡大すればするほど、更に多くのサーバーが必要になり、データセンターに集積するコンピュータ等の数も増大していく。やがて台数が増え過ぎると、管理コストや技術面の問題から、自社で管理せず外部データセンターに預けるようになり、そして情報は「所有」から「利用」の時代となってくると、メガデータセンター化していくことになる。
実は、すでにそうした動きは始まっており、メガデータセンターの電力消費量が凄まじいことになっている。例えば、Google社では、同社の公表された情報ではないが、専門家の分析では世界中で数十万台から百万台という規模のブレードサーバを運用管理していると言われている。その電力消費総量は、1社だけで実に日本全体の総電力消費量の1000分の1以上に相当するという状況である。Google社では新たにデータセンターを建設する場合は、建設場所を必ず大きな発電所のそばに選定しているという。送電ロスを少しでも抑えるためである。
この例は、現時点では確かに極端な例かもしれない。しかし、そう遠くない時期に、データセンターを事業として展開している企業だけでなく、自社でサーバルームを持っている一般の企業でも、ハードウェアを購入する金額よりそれを運用するための電力消費の方がコストが上回るという状況になると予測されている。
データセンターの電力問題は、サーバが本来情報処理をするために必要な電力と同じ位の電力量を、コンピュータ集積が発生する大量の熱を冷却するために消費しなければならないことにある。そして、電力消費量があまりにも大きくなり、電力料金も膨大になり、経営戦略上単なる経費というレベルでなくなりつつあるのだ。
(早稲田大学IT戦略研究所主催、エグゼクティブリーダーズフォーラム第22回インタラクティブ・ミーティング講演「グリーンITが拓く情報新時代:環境と調和した持続的IT社会の実現に向けて」より)
ほしの・たけお 1978年、通商産業省(現・経済産業省)に入省。基礎産業局総務課、工業技術院技術振興課、機械情報産業局電子機器課(現・情報通信機器課)、スタンフォード大学留学、中東アフリカ室、資源エネルギー庁原子力産業課、製造産業局鉄鋼課等を経て、現在、商務情報政策局参事官。主として半導体デバイス、電子機器、グリーンIT政策等を担当。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授