川口は説明を続けた。「さて、ここで最初の1行目に何を書き出すかが重要となる。前回さまざまな課題を挙げて整理したわけだが、1行目に全員が同じ課題の解決策を書いてしまったら、2行目以降もそれを発展させたアイデアばかりが出されることとなり、解決策が偏ってしまう。これを避けるために、1行目はあらかじめ話し合って課題を分担しておくといい。例えば、4人で3枚ずつだとすると、1行目は12枚となる。この12枚に、前回の課題(イシュー・ツリー)の3〜4レベル目を分担して当てはめる。課題の粒度をなるべくそろえるのがポイントだ。そして、『○○が低下している』と表現された課題に対して『○○を向上させる』といった具合に、表現を裏返して解決策を記述する」
飲み込みの早い奥山が「上から4レベル目にあたる水色のカードがちょうど12枚ありますね。例えば『IT部門に変革のリーダーシップがない』という課題を裏返して『IT部門の変革へのリーダーシップを強化する』という具合に1行目の1枚を設定すれば良いのですね」と発言した。
「そうだ、さすが奥山さん。それでその調子で1行目を分担してみると良い」。川口の言葉に気を良くした奥山が中心となって1行目に当たる課題を分担していった。阿部と浅賀は、最初は奥山の勢いにおされ気味だったが、次第に要領がつかめてきた様子で、徐々に共同作業が進んでいったのだった。
内山悟志(うちやま さとし)
株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授