「夢ではない」実現可能性が増す宇宙太陽光発電──宙博の講演と展示から【前編】(2/2 ページ)

» 2009年12月15日 07時45分 公開
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SSPS実現までの課題

 では現時点でのSSPSの課題としては、(1)どのような衛星軌道を取るか、(2)どうやって軌道まで持って行くか、(3)どうやってエネルギーを伝送するか(マイクロ波は無害で環境に影響を与えないか)などといったことが挙げられる。

 軌道として考えられているのは、静止軌道、太陽同期軌道、準天頂軌道の3つ。それぞれ長所と短所がある。

 静止軌道は夏至と冬至の数分間をのぞき1年中太陽光を受けられる(地球直径に比べて十分な高度があるため地軸の傾きによって地球の影に入ることがない)ため常時発電が可能だが、高度が3万6000キロと非常に遠いため送電・受電のためのアンテナが巨大になる。

SSPSを静止軌道に上げたときのイメージ SSPSを静止軌道に上げたときのイメージ

 太陽同期軌道は「だいち(ALOS)」(陸域観測技術衛星)や「いぶき(GOSAT)」(温室効果ガス観測技術衛星)などと同じ軌道、高度が500キロ〜1000キロと近いためエネルギー伝送では有利だが、地表から見える時間が短いため常時性が低いことが欠点、これをカバーするために複数の衛星によるフォーメーション運用が必要。

SSPSを太陽同期軌道に上げたときのイメージ SSPSを太陽同期軌道に上げたときのイメージ

 準天頂軌道は静止軌道からずらし、日本の真上に近い位置に長くとどまらせるという軌道。伝送距離は静止軌道と同じ3万 6000キロだが、見上げ角70度という高角度から電波を降らせられるため受電側の効率が非常に良いという利点がある。3機使うことで常時性も確保できるという。現時点でどの軌道が最適という答えは出ていない。

SSPSを準天頂軌道に上げたときのイメージ SSPSを準天頂軌道に上げたときのイメージ

 エネルギー伝送に関する課題として狼氏は2つ挙げた。1つは、SPSS衛星の発電部は常に太陽側に向け、その一方で送電アンテナは地表を向いていなければならない。このため、両者間に回転部が必要になるが(静止衛星軌道でも1日に1回転する)、回転部に大電力を流す必要があるという問題。100キロワットクラスでは例があるが、ギガワット(100万キロワット)クラスの電力を流すことができるかどうか。

 もう1つ、SSPS衛星はキロメートルオーダーのサイズとなり、その上を400ボルト程度の比較的低電圧で送電部に向けて大電力を送る必要がある。するとメガアンペアクラスの超大電流になるが、そのような電流を流せる電線は非常に太くなってしまう(重量も増す)という問題。解決策として、前者には太陽光をミラーに反射させてから太陽電池に照射することが考えられており、後者では高温超電導ケーブルを利用することで解決の道筋が見えてきたとしている。


【後編】に続く

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