年齢とともに低下するのが免疫機能。免疫力が落ちるとウイルスや細菌に感染しやくすく、病気が治りにくくなるので注意が必要です。
体の免疫システムの中で最も重要なのは、骨の中にある骨髄です。ここでは血液成分の赤血球、白血球、血小板とともに、免疫機能に重要なリンパ球を生産しています。リンパ球のうちBリンパ球と呼ばれるものは、異物を排除するための物質である抗体を産生する働きがあります。骨髄は加齢とともに変化して、細胞の密度が少しずつ減って、脂肪や繊維成分が増えてきます。リンパ球の生産量は徐々に減ります。これが加齢に伴う「防御機能の低下」です。
一方、骨髄でつくられたリンパ球の一部は胸腺に移動し、分裂、増殖してTリンパ球と呼ばれる特殊な免疫機能を持つ細胞になります。胸腺の大きさは年齢により変化します。生まれてからだんだん大きくなって重みを増した胸腺は、思春期にあたる10代半ばでもっとも大きくなります。それを過ぎると、胸腺の皮質や髄質が脂肪組織に置き換わって、40代の後半にはほとんどが脂肪だけになってしまいます。
胸腺には「自己と非自己を認識する」という役割があります。中年以降にこの働きが衰えると、自分自身の細胞成分を攻撃してしまうようになり、慢性関節リウマチなどの自己免疫性疾患が増えるといわれています。これが加齢に伴う「自己と異物の識別能力の低下」です。
大腸や小腸などの腸管は、細菌やウイルスなどが身体の中に進入しやすい場所なので、免疫システムが発達しています。腸管免疫機能が低下すると、腸管内の善玉菌(ビフィズス菌・乳酸菌など)が減り悪玉菌(大腸菌やウェルシュ菌など)が増え、腸内異常発酵や細菌性下痢を起こしやすくなります。また免疫機能が低下すると、監視の目を逃れた異型細胞(癌化した細胞)が増殖して、胃癌や大腸癌が増えてきます。
骨髄機能の低下 → Bリンパ球の減少 → ウイルスや細菌感染症の増加
胸腺機能の低下 → Tリンパ球の減少 → 自己免疫疾患の増加
腸管免疫の低下 → 善玉菌の減少・悪玉菌の増加 → 胃癌や大腸癌の増加
老化による免疫機能の変化を表にまとめました。免疫力が落ちるとウイルスや細菌感染を起こしやすくなり、一度病気になると治りにくくなります。癌の発症や、慢性関節リウマチによる関節痛も増えます。結局、生活の質(QOL)は低下してしまうのです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授