売上高が500億円から2000億円といった中堅ベンダーへのオフショア開発の影響は複雑です。
中小ベンダーがすぐに影響を受けるのに対して、中小ベンダーの発注元である中堅ベンダーへの影響はやや時間をおいて発生してくることになります。この時間差は、将来への方向転換への猶予期間・準備期間ととらえて迅速に戦略立案と意思決定を行う中堅ベンダーと、一過性の需要落ち込みと思い込み現状維持のまま忍耐し続けるベンダーの二種類に分けることになります。結論から言えば、業界での存在意義を一気に失っていくベンダーも出てくることになるでしょう。
中堅ベンダーの中には、大手ベンダーのグループ子会社のベンダーが多く存在します。
親会社はオフショア拠点を含めたグループ内での各子会社ベンダーの存在意義や役割分担・方向性を決めることを迫られます。システム開発やサービスに必要となるエンジニアや設備の確保、マーケットから求められる原価を考える中から、子会社の維持に必要となるコストが導出されてきます。
例えば、現在のところ1000〜2,000億円の売上高を上げている子会社であったとしても、オフショア活用により子会社向けの充分な仕事が供給できなくなる場合には、他ベンダーへの売却も現実的な選択肢となります。
中堅ベンダーの中には再編の流れをうまく利用し、一挙に大手へと変身していくベンダーも登場してきます。
数年前「ベンダーは売り上げ3000億円以上でないと生き残れない」との認識のもと、単純な規模拡大を正当化し、M&Aを繰り返した企業も見受けられました。我々としてはこの売り上げ3000億円という数字に、経営的な根拠を全く見いだしていません。結論から申せばまだまだ売り上げ規模的には「少な過ぎ」「中途半端」な感じは否めません。
言うまでもなく、ただ大きければ良いというものではありません。ホールディング制を方便に単なる寄せ集めのままのベンダーも存在します。これではさらなる大きな成長の余地は見込めません。エンジニアや営業の「一社」としての動員力・機動力が出せなければ意味がありません。さらに大事なことは、合併による資金量の拡大が無ければ、大規模ベンダーなりの投資ができません。M&Aの戦略においても、まだまだ改善の余地が大きいと考えています。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授