情報システム担当者の持つべきスキルセットに変化が生じている。IT専門の調査会社、GartnerでCIO(最高情報責任者)を務めるダルコ・ヘリック氏に聞いた。
クラウドコンピューティングの普及により、情報システム部門の役割が変わると言われている。サーバなどのインフラをデータセンターから利用する場合に、サーバの保守運用などの従来型業務が必要なくなるのは想像に難くない。
この動きが広がると、情報システム担当者の持つべきスキルセットにも変化が生じると考えられる。その変化の本質はどこにあるのか。IT専門の調査会社、GartnerでCIO(最高情報責任者)を務めるダルコ・ヘリック氏に聞いた。
ヘリック氏は「新スキルは他社との関係を築く“リレーションシップマネジメント”である」と指摘する。従来、インフラ管理などをするイメージが強かった情シス部門の仕事の役割が、今後はよりビジネスにかかわってくるという。
例えば、IT部門が営業やマーケティング、生産など複数の業務部門をとりまとめ、顧客向けの提案書を作成したり、見込み顧客や契約の管理、生産計画の調整をしたりする可能性がある。複数部門を横断する役割をIT部門が担うことで、仕事の質を高められる期待がある。
だが言うのは簡単でも、これがなかなか難しい。「リレーションシップをつくるというスキルは従来の情報システム担当者には求められてこなかった」(同氏)。
情シス部門は「クラウドプロバイダーになる必要がある」とヘリック氏は指摘する。従来は自社でシステムを構築し、管理することが主な業務だったが、クラウドになるとそうした作業の比率が相対的に低くなる。一方で、多数のユーザーが業務を進めやすくするための多数のクラウドサービスの中から、最適なものを選定し、ユーザー向けに提供していくといった役割が重要になってくる。
最適なサービスを選定する際には、ユーザーと関係を持ちながら、業務についての情報収集をしておくことが不可欠になる。システムの利用に当たり業務部門同士の連携を前提にしていることから、ユーザーがサービスを利用する際にも、情シス担当者はユーザーごとの要件のヒアリングやサポート、改善活動、クラウドサービス提供会社との交渉などもすることになる。
「1人の情シス担当者がさまざまな“お客”を相手にする必要があり、現在はそのスキルセットがない」(同氏)
そうした「リレーションシップマネジメント」のスキルを持つ人材を自社で育てるのか、中途採用で獲得するのかも議論が分かれるところのようだ。ヘリック氏は「時間を考えると中途採用の方がいいかもしれない」と指摘する。
情シス部門の役割の構造変化を読み取り、経営層には正しいかじ取りが求められそうだ。
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